・・・諸人の救ひを欠かば 争でか威名八州を振ふを得ん 沼藺残燈影裡刀光閃めく 修羅闘一場を現出す 死後の座は金きんかんたんを分ち 生前の手は紫鴛鴦を繍ふ月げつちん秋水珠を留める涙 花は落ちて春山土亦香ばし 非命須らく薄命に非ざるを・・・ 内田魯庵 「八犬伝談余」
・・・今一証を示さんに、駿州清見寺内に石碑あり、この碑は、前年幕府の軍艦咸臨丸が、清水港に撃たれたるときに戦没したる春山弁造以下脱走士の為めに建てたるものにして、碑の背面に食人之食者死人之事の九字を大書して榎本武揚と記し、公衆の観に任して憚るとこ・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・の発明も、その傍観性、非動性、負かされづめで結局勝ったのだという主観的な独善性等に引き下げられて、本質には春山行夫氏が評した次の言葉がふさわしい種類の身ぶりであった。「横光の自我は現実を截断する力がないから未完成である」と。普通の言葉でこれ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 不安の文学提唱、その流布の浅薄な性質については、春山行夫などが、言葉に衣をきせずに批判した。彼は、現在フランスでは左翼的な立場を明らかにしているジイドの発展性を見ずに不安の文学の代表者のようにかついだり、五十三年も前に死んだドストイェ・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
出典:青空文庫