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・・・三十俵つけ一まちにまとまった田に一草の晩稲を作ってある。一株一握りにならないほど大株に肥えてる。穂の重みで一つらに中伏に伏している。兄夫婦はいかにも心持ちよさそうに畔に立ってながめる。西の風で稲は東へ向いてるから、西手の方から刈り始める。・・・
伊藤左千夫
「隣の嫁」
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・・・色よく黄ばんだ晩稲に露をおんで、シットリと打伏した光景は、気のせいか殊に清々しく、胸のすくような眺めである。民子はいつの間にか来ていて、昨日の雨で洗い流した赤土の上に、二葉三葉銀杏の葉の落ちるのを拾っている。「民さん、もうきたかい。この・・・
伊藤左千夫
「野菊の墓」