・・・『働く婦人』三月号に、村山知義さんの「結婚」という連載小説がある。第六回の三月号の分には、一枚の大きいさし画がついていた。ハダカ電燈のつり下ったせまい台の上に立て鏡だの大きなはけの見える化粧箱がおかれていて一寸見には楽屋かと思える場所で・・・ 宮本百合子 「さしえ」
・・・徳永直の「太陽のない街」村山知義の「暴力団記」「東洋車輌工場」その他多くの新しい文学作品が現れた。中野重治の「蝶番い」「根」「鉄の話」黒島伝治の「橇」その他、これらの作品はそれぞれ歴史的な意味を持った。当時のこの文学運動の特徴は、職業的な作・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・この年はプロレタリア芸術家の転向の問題が注目をひいた。村山知義の「白夜」その他、運動と個性の分裂をモメントとして権力に屈したインテリゲンチャの告白がいくつもの小説となってあらわれた。治安維持法そのものの非人道性をとりあげた作品はなかった。こ・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・例えば、岸田国士等によって言われている、演劇アカデミイの問題で村山知義氏は、基本的な技術を与えることでは、アカデミイも新しい演劇のために何物かを与えるであろうがと言っておられる。その基本的技術というのも、果してブルジョア的な新劇と、私たちが・・・ 宮本百合子 「一つの感想」
・・・今日でも尚そのことが一般に嗤うべきこと、作家にとっても読者にとっても害悪しかないことと理解され切っていないところがあり、例えば三月号の『文芸』には村山知義氏が「父たち母たち」という小説を書いている。かつて「白夜」を書いたこの作者は「思想関係・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・本当に、文学における才能や作家としての閲歴のある村山、藤森、中野、貴司その他の人々が自他ともに大きい〔十三字伏字〕経験の中から、どうして人の心を深くうち、歴史というものをまざまざ髣髴せしめるような制作をしないのであろうか。 先頃立野信之・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
・・・ 脚本では、すでに村山知義の「全線」「勝利の記録」などがある。詩は、多くパリ・コンミューン、ソヴェト同盟の「十月」その後の社会主義建設、朝鮮、中国の同志についてうたった。小説に橋本英吉の「市街戦」、村山知義の短篇小説、報告的旅行記として・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
・・・ 私は、最近になって日本におけるプロレタリア文学のかつての指導者のある人たち、村山知義、林房雄、亀井勝一郎諸氏の社会的階級的行動を見て、今日の情勢におけるそれらの人々の意外と思われるような弱さの根源となっている内的なものの契機は、遠く以・・・ 宮本百合子 「文学における古いもの・新しいもの」
・・・「勝沼戦記」村山知義。 本多顕彰氏は月評の中で「勝沼戦記」は戦いを暗い方から描いたもの、「明治元年」は明るい方から書いたものという意味の短評をしていられた。「勝沼戦記」は伏見鳥羽の戦いに敗れて落ちめになってからの近藤勇と土方歳三とが・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ひとめ見て、何となしはっとした。村山主将が立ってマイクの前であいさつしている。左側に古橋、橋爪その他の選手たちが並んでかけているのだが、その五人はいっせいに頭を下げ視線をおとし、悲壮めいた緊張につつまれている。快活な、スポーティな雰囲気より・・・ 宮本百合子 「ボン・ボヤージ!」
出典:青空文庫