・・・ついては、先ず来月は帝大の巻にしたいと思いますが、貴方様にお願いできないかと思うのです。四百字詰原稿十五枚前後、内容はリアルに面白くお願いしたいと存じます。締切は、かならず、厳守して頂きたいと存じます。甚だ手紙で失礼ですが、ぜひ御承諾下さっ・・・ 太宰治 「二十世紀旗手」
・・・でも、のぞみとあらば、来月あたり、君たちに向って何か言ってあげてもかまわないが、君たちは、キタナクテね。なにせ、まったくの無学なんだから、『文学』でない部分に於いてひとつ撃つ。例えば、剣道の試合のとき、撃つところは、お面、お胴、お小手、とき・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・「大丈夫。来月は、だいじょうぶ。」と無邪気な口調で言う。 その頃は、まだよかったのだ。節子の着物が無くなりはじめた。いつのまにやら箪笥から、すっと姿を消している。はじめ、まだ一度も袖をとおさぬ訪問着が、すっと無くなっているのに気附い・・・ 太宰治 「花火」
・・・許して下さい、来月号か、その次あたりに書かせて下さい、と願ったけれども、それは聞き容れられなかった。ぜひ今日中に五枚でも十枚でも書いてくれなければ困る、と言う。私も、いやそれは困る、と言う。「いかがでしょう。これから、一緒にお酒を飲んで・・・ 太宰治 「フォスフォレッスセンス」
・・・その土地の友人から遊びに来いと言われ、私はいまは暑いからいやだ、もっと涼しくなってから参りますと返事したら、その友人から重ねて、吉田の火祭りは一年に一度しか無いのです、吉田は、もはや既に涼しい、来月になったら寒くなります、という手紙で、ひど・・・ 太宰治 「服装に就いて」
・・・今夜は二十六日じゃ、来月二十六日はみなの衆も存知の通り、二十六夜待ちじゃ。月天子山のはを出でんとして、光を放ちたまうとき、疾翔大力、爾迦夷波羅夷の三尊が、東のそらに出現まします。今宵は月は異なれど、まことの心には又あらはれ給わぬことでない。・・・ 宮沢賢治 「二十六夜」
・・・ お君は、びっくりしてきいた。「川窪はんで、今月の分にとお呉れやはったんや。 来月は、どうなるんやか私は知らん。「何故?「国に貸したものがあるさかい何の彼の世話やいてもろうとる、あの役場の馬場はんと一緒になって、幾分・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・ 白地の麻単衣をお送りいたします。来月十日過にはお目にかかれ〔約四字抹消〕 トマトはまだですか。 七月三十一日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 駒込林町より〕 午後の六時前。食堂で。 第四信 この数日来の暑気の烈しさはどうで・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・米のことが皆の心配の種になって、来月から七分搗と云われていた時、この米屋の前を通ると夜十二時頃でも煌々と電燈の光を狭い往来に溢らせていた。モーターが唸って、小僧は真白けになって疲れた動作で黙りこくって働いていた。ズックの袋に入れて札をつけた・・・ 宮本百合子 「この初冬」
・・・それから角の本やによって、第一書房のをとって、来月の『アララギ』を一冊とらせる注文をして、玉川電車にのりました。暑く、汗が出る、出る。水瓜の汗故、サラサラ流れる。家へついたのは十時半すぎでした。 風呂へ入って、お文ちゃん先へ床につき、自・・・ 宮本百合子 「日記・書簡」
出典:青空文庫