・・・ただたくさんのくるみの木が葉をさんさんと光らしてその霧の中に立ち黄金の円光をもった電気栗鼠が可愛い顔をその中からちらちらのぞいているだけでした。 そのときすうっと霧がはれかかりました。どこかへ行く街道らしく小さな電燈の一列についた通・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・一寸こっちを見たところには栗鼠の軽さもある。ほんとうに心配なんだ。かあいそう。市野川やみんながぞろぞろ崖をみちの方へ上って行くらしい。そうすればおれはやっぱり川を下ったほうがいいんだ。もしも誰か途中で止っていてはわるい。尤も靴下もポ・・・ 宮沢賢治 「台川」
・・・すると一本のくるみの木の梢を、栗鼠がぴょんととんでいました。一郎はすぐ手まねぎしてそれをとめて、「おい、りす、やまねこがここを通らなかったかい。」とたずねました。するとりすは、木の上から、額に手をかざして、一郎を見ながらこたえました。・・・ 宮沢賢治 「どんぐりと山猫」
・・・本の栗の木は 後光をだしていた わたしはいただきの 石にこしかけて 朝めしの堅ぱんを かじりはじめたら その栗の木がにわかに ゆすれだして 降りて来たのは 二疋の電気栗鼠 わたしは急いで……」「・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・ やがて、美味いウドンの昼飯をすませ、山芋掘の鍬をかついだ××君を先頭に家を出た。栗鼠が風の如く杉の梢を、枝から枝へ飛び移って行く。栗の青いイガが草の中へ落ちている×××老人の家で夜まで遊ぼうというわけだ。四・一六の時、×××老人は婆さ・・・ 宮本百合子 「飛行機の下の村」
出典:青空文庫