・・・病の根は電磁気や光よりもっと根本的な時と空間の概念の中に潜伏している事に眼をつけた。そうしてその腐りかかった、間に合わせの時と空間を取って捨てて、新しい健全なものをその代りに植え込んだ。その手術で物理学は一夜に若返った。そして電磁気や光に関・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・こうすれば、言葉と白墨の線とによって、大きさや角度や三角函数などの概念を注ぎ込むよりも遥かに早く確実に、おまけに面白くこれらの数学的関係を呑み込ませる事が出来る。一体こういう学問の実際の起原はそういう実用問題であったではないか。例えばタレー・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・において、プドーフキンらのモンタージュ論の基礎的概念を批評し、これに代わるべき弁証法的モンタージュ論を提出し、のみならずこれに基づいた作品をこしらえようとした。しかし彼のこれらの試みはまた一派の人からは形式主義象徴主義に堕したものとして非難・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
一「バード南極探険」は近ごろ見た映画の内でおもしろいものの一つであった。これまでにも他の探険隊のとった写真やその記事などをいろいろ見てかなりまでは極地の風物の概念を得たつもりでいたのだが、しかし活動映画・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・しこうして、その理想なるものが、忠とか孝とかいう、一種抽象した概念を直ちに実際として、即ち、この世にあり得るものとして、それを理想とさせた、即ち孔子を本家として、全然その通りにならなくともとにかくそれを目あてとして行くのであります。 な・・・ 夏目漱石 「教育と文芸」
・・・と云うような概念は抽象の結果、よほど発達した後に「この傾向」として放出したものと認めるのであります。それは、ともかくも「吾人は意識の連続を求める」と云う事だけを事実として受けとらねばならぬのであります。もっと明暸に云うと「意識には連続的傾向・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・ この時私は始めて文学とはどんなものであるか、その概念を根本的に自力で作り上げるよりほかに、私を救う途はないのだと悟ったのです。今までは全く他人本位で、根のない萍のように、そこいらをでたらめに漂よっていたから、駄目であったという事によう・・・ 夏目漱石 「私の個人主義」
・・・何となれば、幾何学においては、その根本概念が感官的直観と一致するが故に、それは何人にも受入れられるが、形而上学的問題においては、最始の根本概念を明晰に判明に把握することが困難なのである。本来の性質からは、それは幾何学のものよりも、一層明晰な・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
・・・単に概念的論理的でない。直感的に訴えるものがあるのである。パスカルの語を借りていえば、単に l'esprit de gomtrie[幾何学の精神]でなくて、l'esprit de finesse[繊細の精神]というものがあると思う。フランス・・・ 西田幾多郎 「フランス哲学についての感想」
・・・とかいふ言葉がないのは不思議であるが、実際ニイチェの思想の中には、多くの矛盾した対立があり、且つ複雑した多要素が混入して居るので、単純にこれを一つの概念でイズムに形態化することができないのである。人々は各ニイチェの多様質の宇宙の中から、夫々・・・ 萩原朔太郎 「ニイチェに就いての雑感」
出典:青空文庫