・・・ところが働きながら歯医者へ通うことは時間の都合で不便だから、とうとうわたし達は工場へ歯科診療所をこしらえることにしたんです。二年計画でやったんです。みんなよろこんでいますよ。――わたしたちは誰しも早く婆さんになってしまいたくはないものね」・・・ 宮本百合子 「明るい工場」
・・・往きに私の歯医者を紹介する約束があった。飯田橋で三時すぎYと落ち合い、万世橋行の電車に乗った。「網野さんに行く先まだ秘密なのよ」「え?――何処です――銀座の方じゃあないんですか」「違うらしいわ」 網野さんは九月中から暫く東京・・・ 宮本百合子 「九月の或る日」
・・・春江は歯医者にでも行って居た為に助かる。 ◎国男は一日の朝、小田原養生館を立ち大船迄来、鎌倉へ行こうとして居るとき、震災に会い歩いて鎌倉へ行った。為に、被害の甚大な二点を幸運にすりぬけて助かった。 ◎木村兄弟が来、長男の男が上の男の・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
出典:青空文庫