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・・・「何、水母にやられたんだ。」 海にはこの数日来、俄に水母が殖えたらしかった。現に僕もおとといの朝、左の肩から上膊へかけてずっと針の痕をつけられていた。「どこを?」「頸のまわりを。やられたなと思ってまわりを見ると、何匹も水の中・・・
芥川竜之介
「海のほとり」
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・・・ 末遠いパノラマのなかで、花火は星水母ほどのさやけさに光っては消えた。海は暮れかけていたが、その方はまだ明るみが残っていた。 しばらくすると少年達もそれに気がついた。彼は心の中で喜んだ。「四十九」「ああ。四十九」 そんな・・・
梶井基次郎
「城のある町にて」