・・・ 飛行船が北氷洋上で氷原をとった写真を現像したら思いもかけぬ飛行機の氷の上に横たわる姿が現われたので、これはきっと先年行くえ不明になった有名な老探検家の最後を物語るものだろうという事になったが、よくよく調べてみると、これは写真技師がうっ・・・ 寺田寅彦 「カメラをさげて」
・・・そのころにはもうあの北氷洋上の惨劇も子熊の記憶からはとうの昔に消えてしまっているであろう。 動物の目から見ればやはり人間は得手勝手なものに見えるであろう。氷海の無辜の住民たる白熊に対してはソビエト探険隊員は残虐なる暴君として血と生命との・・・ 寺田寅彦 「空想日録」
・・・ 台風の襲来を未然に予知し、その進路とその勢力の消長とを今よりもより確実に予測するためには、どうしても太平洋上ならびに日本海上に若干の観測地点を必要とし、その上にまた大陸方面からオホツク海方面までも観測網を広げる必要があるように思われる・・・ 寺田寅彦 「天災と国防」
・・・ウィーゼ氏の話によると数年来かの国の気象学者たちは、気圧その他の気象学的要素の配置から夏期における北氷洋上の氷の分布状況を予報することを研究し、それがだいぶうまく的中するようになった。そのおかげで今度の航海がたいへんに楽であったというのであ・・・ 寺田寅彦 「北氷洋の氷の割れる音」
・・・をよんでもわかるとおり、「ミッドウェイ洋上、五分間の手遅れが太平洋全海戦の運命を決した」と五分早かったらという調子で、海戦の状況がこまかく専門的に記されていることである。元海軍中将であるこの筆者は、その達筆な戦記のなかにきわめて効果的に自然・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
出典:青空文庫