・・・主人公の名前を、かりに、津島修治、とでもして置こう。これは私の戸籍名なのであるが、下手に仮名を用いて、うっかり偶然、実在の人の名に似ていたりして、そのひとに迷惑をかけるのも心苦しいから、そのような誤解の起らぬよう、私の戸籍名を提供するのであ・・・ 太宰治 「家庭の幸福」
・・・上げましたところ、御手紙に依れば、キウリ不着の趣き御手数ながら御地停車場を御調べ申し御返事願上候、以上は奥様へ御申伝え下されたく、以下、二三言、私、明けて二十八年間、十六歳の秋より四十四歳の現在まで、津島家出入りの貧しき商人、全く無学の者に・・・ 太宰治 「帰去来」
・・・きょう、只今徹夜にて仕事中、後略のまま。津島修二様。早川生。」 月日。「玉稿昨日頂戴しました。先日、貴兄からのハガキどういう理由だかはっきりしなかったところ、昨日の原稿を読んで意味がよくわかりました。先日の僕の依頼に就て、態度が・・・ 太宰治 「虚構の春」
出典:青空文庫