・・・こっちのは滅茶滅茶である。 子供はつかまったそうだ。親がえらい罰金をくうのだろう。 どっか松林の下に列車が止ってしまった。兎が見えたらしい。廊下で、 男の声 ここいらの住民は兎は食わないんです。 女の声 でも沢山とるんでしょ・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・法隆寺の火事で壁画が滅茶滅茶にされたことは、人々に何となし生命あるものの蒙った虐待を感じさせ、ショックは大きく波紋をひろげた。更にこの法隆寺の火事からは、思いがけない毒まんじゅうがころげ出し、責任者である僧は、留置場でくびをつりそこなった。・・・ 宮本百合子 「国宝」
・・・ 可愛い人だと思いながら、背を丸くして行く彼のお供をして行くと、成程、まだ新らしい用箪笥が滅茶滅茶になって居る。 鍵がかかって居るのを、無理に何か道具でこじあけたと見えて、金具はガタガタになり、桐の軟かい材には無残な抉り傷がついて居・・・ 宮本百合子 「盗難」
・・・ 黄色な草の間を縫うて、まがりくねった里道には、馬のひづめのあとに轍が、一寸も喰い込んで、滅茶滅茶について居る。歩くのにも足駄でなければ、足の上の方までよごれる。 けれども村の者達は、此の困難な往還に対して、何の不服も感じないのみか・・・ 宮本百合子 「「禰宜様宮田」創作メモ」
・・・神話に、天照大神が機を織っていたらば、素戔嗚尊が暴れ込んで、馬の生皮を投げ込んで機を滅茶滅茶にしてしまったという插話がある。女酋長である天照大神はそれを憤って、おそらくその頃の住居でもあった岩屋にとじ籠って戸をしめてしまった。神々は閉口した・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・新らしい、ちゃんと作ってある畑をわざと滅茶滅茶に踏こくったり、ガワガワ樹の皮を剥いたりするんですもの、僕驚いちゃったや「ああああ其那ことをする者はね、決して立派な子じゃあないよ「此の水毒じゃあないのおかあさま、よ、此の水 卵色の・・・ 宮本百合子 「われらの家」
出典:青空文庫