・・・そういう潔白な美しい行為は人間と科学との結ばれようの正しさを、おのずから示している。彼女を生んだポーランドの生活、彼女を活動させたフランスの社会の習俗、それらのことは彼女の卓抜な性格、資質と切るに切れない関係をもって、偉大な仕事を成就させて・・・ 宮本百合子 「寒の梅」
・・・て、嫁入道具としてだけ与えられていた結果、いざ本当にそれで食わなければならないとなったときに、知っていたはずのフランス語もピアノも絵も、生活の役に立たないことが証明されて、悲劇的にその命をを終る美しく潔白な女の一生を描いて心を打つものをもっ・・・ 宮本百合子 「現実の道」
・・・空々しく、イギリスの政治家は潔白な生活をしているなどと云っているけれども、そして、フランスの防衛の準備がおくれたのは総てそれら私闘が原因であるかのように云っているが、では、ダラディエやレイノーは、何故そんなに互に対立したり、阻害し合ったりし・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・当分の間日本の人民は、清廉潔白な内閣をもつことは困難であろうと予測している。日本の独占資本がより強力な独占資本の庇護のもとに自身の存在を維持しようとしているとき、その利益を代表する政権が、真に民主的であり得ないことは明瞭である。すべての悪質・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・年をとった人々でも、やはり尊敬をもって、この卓抜な一婦人科学者の堅忍と潔白とが成就せしめた業績を読みとったと思う。だが、キュリー夫人へのその讚歎をそれなりすらりと日本の現状にふりむけてみて、そこにある日本の婦人科学者の成長の可能条件の可否に・・・ 宮本百合子 「市民の生活と科学」
・・・ レフ・トルストイは、全生涯を賭して解決し得なかった諸矛盾のまことに正直な、潔白な負い手として傷つきながら、「自分にとったより遙かに多くのものを」ソフィヤ夫人と八人の子供達とにのこして、死んだのである。 レフ・トルストイの生涯の終っ・・・ 宮本百合子 「ジャンの物語」
・・・「そして百余日のあいだそんなやりもしないのにそんな共同正犯なんて、そんな馬鹿なことがあるものかという気持と、私は自分の潔白を申しでて来たにもかかわらず、髪の毛をつかんでそしてあの武蔵野市の警察の玄関をひきずり歩かされ、そして警察の権力によっ・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・ 相当な面目を保った異性間には、何よりも潔白が重要視されます。友達は、飽くまでも友達です。而も、その友情が異性間に於ける場合には、自ら、同性間より微妙な節度と云うものがあります。決して、現在、日本で若い男女間の所謂交際と云うもののように・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・に書かれているまでのアグネス・スメドレーは、不屈な闘志と生来の潔白な人間的欲求と共に熱病的な矛盾と自然発生的な手さぐりな、しかし熱烈な生きかたとを展開しているのである。「女一人大地を行く」が書かれてから既に十年近い月日が経った。スメドレ・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・ 祖父はよく言えば潔白な性格であり、他の方面からいえば小心な人で、政治的手腕というものは欠けていたように思います。ですから伊藤内閣の時代には所謂正義派で、その生涯では大した金も残さず、しかもその僅かの財産も、没後は後継の人の非生産的な生・・・ 宮本百合子 「わが母をおもう」
出典:青空文庫