・・・討論の中心は、文学サークルが経済・政治闘争と無縁であり得ないという点と新日本文学会の指導のもとにおかれるべきかどうかという点にむけられた。もし経済・政治闘争と無関係であり得ないということを肯定するならば、結局プロレタリア文学運動時代のサーク・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・「家の娘も貴方様、先に二度ほど婿を取ってやりましたがはあ無縁でない、 皆落つきませんだ。」 こんな事を云って一度目のは「さき」が十八の時来たんだそうだけれ共その時は女の方で虫が好かないで離縁して仕舞い二十二の時二度目のが来たけれ・・・ 宮本百合子 「蛋白石」
・・・そして今日では、都会での米、味噌、水にかかわることとして見られる部分があると云っても、あながち文学と全く無縁なものと笑殺され切らぬところも現実の相貌のこわい面白さだと思う。〔一九四〇年七月〕・・・ 宮本百合子 「文学と地方性」
・・・荷風が、弱々しき気むずかしさでそれらの女の生活と内容に自身を無縁なものと感じ、恋愛の対象としての女を花柳界の人々に求めたことも理解される。荷風は花柳界が時代にとりのこされているものであることも十分承知の上で、ただこのマンネリズムの中にだけ彼・・・ 宮本百合子 「歴史の落穂」
・・・も、それは先ず、イタリーを中心としたヨーロッパの重商主義的な商業の大発達、ハンザ同盟、諸大学の設立、部分的ではあるが婦人の向学心も承認されて、スペインのコルド大学には数人の婦人学者も生れた事情とは全く無縁であった。封建日本の知識人たちは一部・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・ ツァウォツキイは無縁墓に埋められたのである。ところがそこには葬いの日の晩までしかいなかった。警察の事に明るい人は誰も知っているだろうが、毎晩市の仮拘留場の前に緑色に塗った馬車が来て、巡査等が一日勉強して拾い集めた人間どもを載せて、拘留・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「破落戸の昇天」
出典:青空文庫