・・・こういう批評は恐ろしく無責任な冷酷なものとして神経過敏な出品者の不快な反感を買うかもしれない。しかしこの種の批評は必ずしも無責任とは云えない、ただ当然な事実の正直な告白に過ぎない。赤と緑の光を混じたものを見て灰色だというのはどうにもならない・・・ 寺田寅彦 「帝展を見ざるの記」
・・・これは実に有難い事である。無責任だというのではないが、何人をも傷つけること無しに感情の自由な発表が許されるからである。 そういう前提を置いて、今年の二科会展覧会の絵を見たままの雑感を書いてみる事にする。 安井氏の絵がやはり目立っ・・・ 寺田寅彦 「二科会展覧会雑感」
・・・御察し申しまするに、あなたはわたくしのいたした事を無責任極まる所為だと思召して、ひどくご立腹になっていらっしゃいますのでしょう。自分で顧みて見ましても、わたくしのいたした事は余り気の利いた所為だとは申されません。全く子供らしい振舞だったと申・・・ 著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外 「田舎」
・・・妙にロマンティックに異性の間の友情というようなものを描いて、実際には恋愛ともいえ、あるいはもっといい加減に男女の間に浮動する感情を、その友情というようなところへ持ちこんで逃避したりする、無責任なくせにまぎらわしい甘ったるさを嫌って、かえって・・・ 宮本百合子 「異性の間の友情」
・・・団体行動の流行は、一人一人の人間としての向上に細かい目を向けないで、ただそこへくっついていさえすればいいのだからという逃避の無責任さを、一層細心にとりのぞいて行かなければなるまい。 若い娘たちの行進の美しさと心をたかめる力は、そこに肉体・・・ 宮本百合子 「女の行進」
・・・そういう行為の無責任さが不愉快なのだというだろうと思う。それももっともではあるし、社会的にその若者が一つの無理な動きをしていることもわかる。けれども、若者の行為が無責任であることは十分明瞭に見ながらも、それによって非常に立腹する自分の心持の・・・ 宮本百合子 「女の自分」
・・・その座談会の記事への感想として、一人の女のひとが、男の理解を高めるということも大切ではあるが、日常には随分女自身無責任な生きかたをしていると思う点がある。そういうところも女として自省されるべきと思うという文章があって、座談会に出ていた一人で・・・ 宮本百合子 「女の歴史」
・・・心の中には、新たに目覚めた人としての燃えるような意図と共に、過去数百年の長い長い間、総ての生活を受動的、隷属的に営んで、人及び自分の運命に対しては、何等能動的な権威を持ち得なかった時代の無智、無反省、無責任の遺物が潜んでいると思うのである。・・・ 宮本百合子 「概念と心其もの」
・・・特に党機関紙にどういう形式と方法をとおしてにしろ本質をゆがめて特徴づけようとする批難があらわれたとき、沈黙しているのは自他への無責任であることを確認した。 さてこの投書は、前のとは少しちがってきて、一方では私の作品の真実が多数の人の心に・・・ 宮本百合子 「河上氏に答える」
・・・下らないエロ雑誌に刺戟されて、働く若い人たちが人間としてならずもののような無責任な男女関係に入ることはあんまり青春の価値を知らなすぎます。いまのデカダンスな空気は若い人の一部に、けじめのない男女関係があたりまえという気分をつくり出しています・・・ 宮本百合子 「悔なき青春を」
出典:青空文庫