・・・尤この頃自分で油絵のようなものをかいているものだから、色々の人の絵を見ると、絵のがらの好き嫌いとは無関係な色々のテクニカルな興味があるのである。実際どれを見ても、当り前な事だが、みんな自分よりは上手な人ばかりである。しかしその上手な点を「頭・・・ 寺田寅彦 「ある日の経験」
・・・そうして誌された内容とは無関係にそこに取り扱われている土地その物に対する興味と愛着を呼び起こす。 専門の学術の参考書でもよく似た事がある。何かある題目に関して広く文献を調べようという場合にはいろいろなエンチクロペディやハンドブーフという・・・ 寺田寅彦 「案内者」
・・・それにはイデオロギーの教養に無関係に世界の人間の心を捕えるものがなければならない。そうしてそれはロシア人にもフランス人にも日本人にも共通に通用するものでなければならない。そうだとすれば、それはまた必ずしも映画以来はじめて発明されたものではな・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・しかし科学の庇の下に発達したものの根源は科学以前から科学の具体的内容とは無関係に存在する人間固有の悟性の方則なのである。 因果律といったようなものにしても、その考えは科学の歴史の上でもいろいろの変遷を遂げて来た。そうして一時は仏説などの・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・熱心な野鳥研究家のうちにもしこの実測を試みる人があれば、その結果は自分の仮説などはどうなろうとも、それとは無関係に有益な研究資料となるであろう。 星野温泉はちょっとした谷間になっているが、それを横切って飛ぶことがしばしばあった。そういう・・・ 寺田寅彦 「疑問と空想」
・・・皮相的には全く無関係な知識の間の隔壁が破れて二つのものが一つに包括される。かようにしてすべての戸棚や引出しの仕切りをことごとく破ってしまうのが、物理科学の究極の目的である。隔壁が除かれてももはや最初の混乱状態には帰らない。何となればそれは一・・・ 寺田寅彦 「言語と道具」
・・・つまり明治の新しい女子教育とは全く無関係な女なのである。稽古唄の文句によって、親の許さぬ色恋は悪い事であると知っていたので、初恋の若旦那とは生木を割く辛い目を見せられても、ただその当座泣いて暮して、そして自暴酒を飲む事を覚えた位のもの、別に・・・ 永井荷風 「妾宅」
・・・どうせ無関係な第三者がひとの艶書のぬすみ読みをするときにこっけいの興味が加わらないはずはないわけであるが、書き手が節操上の徳義を負担しないで済むくろうとのような場合には、この興味が他の厳粛な社会的観念に妨げられるおそれがないだけに、読み手は・・・ 夏目漱石 「手紙」
・・・けれどももし倫理的の分子が倫理的に人を刺戟するようにまたそれを無関係の他の方面にそらす事ができぬように作物中に入込んで来たならば、道徳と文芸というものは、けっして切り離す事のできないものであります。両者は元来別物であって各独立したものである・・・ 夏目漱石 「文芸と道徳」
・・・しかし私は右の如く科学と哲学との相違を明にすべきを主張するものではあるが、一派の学者の如く単に両者を無関係的に考えるものではない。哲学は科学を尊重し、科学を材料とするとともに、科学は哲学に基礎附けられねばならない。ガリレイをば根柢なしに建て・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
出典:青空文庫