・・・今では発動機船に冷蔵庫と無電装置を載せて陸岸から千海里近い沖までも海の幸の領域を拡張して行った。 魚貝のみならずいろいろな海草が国民日常の食膳をにぎわす、これらは西洋人の夢想もしないようないろいろのビタミンを含有しているらしい。また海胆・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・きくえさんは、涙に頬を濡して、「無電がついていなかったんでしょうか。無電があったら、兄は決して事故を起すような人ではなかったんですのに」と記者に語ったのであった。「日航」が、真に、科学的にこの悲しい事故の責任をとるならば、この悲痛、切実なき・・・ 宮本百合子 「市民の生活と科学」
・・・という小説にかかれているような愛らしい誇ある婦人無電手をもたらした。そして、各雑誌・新聞などを中心とする労・農通信員の広汎な発達は、大戦前後に、どっさりの前線報道員を生んだ。日本によく知られているシーモノフやゴルバートフの経歴は、いかにも新・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ 思えば愕くべきことだが、日本の鉄道省は、各駅間の無電連絡を一つも持っていないのではなかろうか。 事務室で、チリチリとベルが鳴り、係員がハアハア、ハアハア、と一種の玄人らしさで返事している、あのデンワで、この多忙、繁雑、非能率な国鉄・・・ 宮本百合子 「みのりを豊かに」
出典:青空文庫