・・・が、誰も非常な熱意に燃えて革命を起す人々ではない。我々の胸の中に納まっている種々な希望や意向などの囁きに耳を傾けながら、或る程度まで其等の実行出来難い今日をありのまま受取って穏かな日常生活を続ける一群が、彼の友達らしく見えるのである。・・・ 宮本百合子 「最近悦ばれているものから」
・・・わたしたちは、もっともっと自分たちの現実を自分たちのものとして改善してゆく熱意を自覚すべきだし、その具体的な方法のために智慧と勇気とをもたなければならないと思う。 この小さい本の中でふれられているいくつかの日本の社会生活の民主的発展のた・・・ 宮本百合子 「再版について(『私たちの建設』)」
・・・先ず、作品と作者との関係は、作者の主観的な意欲や創作熱意だけで解決する簡単なものではない。一方的に作者の主観的な意欲や創作熱に基いて表現的努力にばかり傾いて行くと、そこには作品の制作という作品そのものの支配はあっても、作者と作品との関係に対・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
・・・ 飛び交う数字と一種名状すべからざる緊張した熱意で飽和している空気の中をそっと、一人の婦人党員が舞台から日本女のところへきた。彼女は日本女の耳に口をつけて云った。 ――ようこそ! どこからです? ――日本から。 囁きかえした・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・働きつつ学びたいと希望し、美しさとたのしみと勇気の源泉をなじみふかい母国の風土と生活のたたかいのうちに発見し、それを文学に絵画に、映画に音楽に再現し、発展させてゆこうとする熱意を、わたしたちでない誰がその体の内に熱く感じているというのだろう・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・彼自身が後年自分の前に空間と自己自らの熱意の投影しか見なかったと告白していることは、よく彼の作家的現実を説明している。ジイドは、作品そのものよりむしろその作品に至るまでの彼の内的過程が注目と興味とを牽く特別な作家の一人なのである。 一九・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・ジャーナリスト自身とくに日本のジャーナリストとしてこの点にどんな熱意がもたれているだろうか。わたしは、この点についてほんとに知りたい。わたしたちの未来への設計としてそのところが知りたい。 出版危機という表現で出版界の再編成、より大き・・・ 宮本百合子 「ジャーナリズムの航路」
・・・ 次第に覚醒している日本の民衆が肚の底からそのためにたたかっているより明るい確かな社会生活建設の願いと努力、その間には裏切られ、又もりかえす民衆の歴史の熱意は「横になった令嬢」と何のかかわりがあるだろう。中国の民衆を愚昧無気力にしておく・・・ 宮本百合子 「商売は道によってかしこし」
・・・傍目もふらぬそれぞれの人間と事象との在りようを、作者がまた傍目もふらず跟いて行く、その熱中の後姿に、文学に於ける人間再生の熱意、ヒューメンなものが認められるという工合でもあった。 知性の作家と呼ばれた阿部知二がこの時期に発表した「冬の宿・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ 元来、品川の伯父さんと呼ばれた方が、事業上の熱意のほかにどんな趣味をもって居られたかは知らないが、孝子夫人の母上、現子夫人は、今日高齢にかかわらず、猶読書が唯一のたのしみとなっている方である。兄上の谷口辞三郎氏は、早い頃フランス文学を・・・ 宮本百合子 「白藤」
出典:青空文庫