・・・さて景一光広卿を介して御当家御父子とも御心安く相成りおり候。田辺攻の時、関東に御出遊ばされ候三斎公は、景一が外戚の従弟たる森三右衛門を使に田辺へ差立てられ候。森は田辺に着いたし、景一に面会して御旨を伝え、景一はまた赤松家の物頭井門亀右衛門と・・・ 森鴎外 「興津弥五右衛門の遺書」
・・・それが落成すると、六十一になる父滄洲翁と、去年江戸から藩主の供をして帰った、二十九になる仲平さんとが、父子ともに講壇に立つはずである。そのとき滄洲翁が息子によめを取ろうと言い出した。しかしこれは決して容易な問題ではない。 江戸がえり、昌・・・ 森鴎外 「安井夫人」
・・・これだけの相違が我々父子の間に存している。その事をまず小生は前記の手紙によって感じさせられたのである。 正直に言えば自分は、二十七日の事件を聞いたとき、自ら皇室を警衛しに行こうという心持ちは起こさなかった。皇室警衛のために東京には近衛師・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫