・・・が、対手が牛乳屋の小僧だけに、天使と牧童のお伽話を聞く気がする。ただその玉章は、お誓の内証の針箱にいまも秘めてあるらしい。……「……一生の願に、見たいものですな。」「お見せしましょうか。」「恐らく不老長寿の薬になる――近頃はやる・・・ 泉鏡花 「燈明之巻」
・・・ 鉱山、油田に於ける労働から、犬をつれて羊を追っている牧童の仕事に至るまで、この二年間にひろがった生産の分野は数えつくされぬ。そこへ、ソヴェト国家は、労働者の能率を増し、同時に健康な休養を与えるため、五日週間を採用した。五日週間によって・・・ 宮本百合子 「なぜソヴェト同盟に失業がないか?」
・・・笛の音は遠く遠く、羊を追う牧童の胸をまでそそるようにどっしりとして夕暮の闇をはいて居る木の間をくぐって遠く遠く、そのすぐわきに足をのばして白い靴のさきを見つめながら笛に気をとられて居たローズの目は段々に上を見つめて又その目は下に落ちて段々色・・・ 宮本百合子 「無題(一)」
出典:青空文庫