・・・けれども、何年、何の時代に、どういう情勢のもとに起ったことだという意味での具体性のないのが、アレゴリーの中の行為の特性である。 ところで、ごく簡単にしらべて、こういう特徴を見つけたアレゴリーがプロレタリアの文学として、実際どのくらい役に・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・それらのことから派生して、日本の作家はこれまであまり個々の才能を過大に評価しすぎたし、文学創造の過程にある心的な独自性、ほかの精神活動にないメンタルな特性の主張を、おおざっぱに文学の純粋性だの、文学性だのという概念でかためてしまってきた。そ・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・の美しさから思いめぐらしても、音楽にある民族的な特性というものを、音楽の外からの解釈や説明でつけ加えても、それが芸術音楽としての内在的な充実感となって来ないということは、しみじみわかる。そしてまた、音そのものの記号の上にだけ民族的特徴をとら・・・ 宮本百合子 「音楽の民族性と諷刺」
・・・ 現在では女性の――生活の様式がどうしても単調で変化に乏しいと云う点、自分が女性としての性的生活を完全に営んでいなかった事又は、女性の一人として同性の裡に入っていると、自分達の特性に対して馴れ切って無自覚に成りがちであると一緒に、却って・・・ 宮本百合子 「概念と心其もの」
・・・しかし、女の人は、母親になるという特性をもっていますから、その母性は保護されなければなりません。また、働いていた人が年をとって、働けなくなった時に、社会がそれを保護してやらなければなりません。 本当に、働く権利をもつということの内容には・・・ 宮本百合子 「幸福について」
・・・一九五〇年度の文学現象のこのような特性は、それ自身として決して孤立した社会現象ではないのである。 そのようなこんにち、一方では、社会的・歴史的な人類としてわれわれが生きている証左たる、理性の覚醒としての文学、を要望する思いが、切実である・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・「知識階級それ自身の特性を自覚し、飽くまでそれ自身の能力の自覚にもとづいて立ち上っているもの」と理論づけられたのである。 舟橋聖一氏の作品「ダイヴィング」芹沢光治良氏「塩壺」等、いずれも能動精神を作品において具体化しようと試みられて、当・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・しかしこの言葉が自分の頭に残って、幾度か反復せられている間に、だんだんそれが木下と離し難いものとなり、木下の特性を示すもののように思われて来た。今度彼の『地下一尺集』を読んで最初に頭に浮かんだのも、実はこの言葉である。「享楽人」を単に「・・・ 和辻哲郎 「享楽人」
・・・性慾の衝動に動く浮薄な男を描き、あるいは山国海辺、あるいは大都会小都会の風物情緒を描く時には、それがあらゆる階級の男女や東西南北の諸地方を材料とするにかかわらず、またそれぞれの境遇や土地をおのおのその特性によって描いているにかかわらず、結局・・・ 和辻哲郎 「「自然」を深めよ」
・・・それは時にあるいは有閑階級にのみ可能な非実践の実践として、すなわち搾取者の奢侈として特性づけられ得るであろう。あるいはまた怯懦な知識階級の特色としての現実逃避であるとも見られるであろう。しかしこれらの観照は「悠々たる」観の世界を持つものとは・・・ 和辻哲郎 「『青丘雑記』を読む」
出典:青空文庫