・・・これまで日本の民衆はさまざまの奇妙独善的な人権蹂躙的な誓いをたてさせられてきた。こんにち民衆が自分の未来のためにもっている誓いはただ一つしかない。それは欺瞞のない日本の民主化と自主自立の民族生活をもつことである。新しい五人の放送委員はあらた・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・の発明も、その傍観性、非動性、負かされづめで結局勝ったのだという主観的な独善性等に引き下げられて、本質には春山行夫氏が評した次の言葉がふさわしい種類の身ぶりであった。「横光の自我は現実を截断する力がないから未完成である」と。普通の言葉でこれ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・作家、評論家などの間に比較的この技術上の関心がひろがって行かないのは、それらの人々が自分たちの職業的な習慣のなかで独善的であるというよりは、仮名づかいという純技術上の問題以前の問題により深い関心を求められているからだろうと思う。つまり、今日・・・ 宮本百合子 「今日の文章」
・・・現代の日々は、そういう独善の文学的境地というものの成り立ちを不可能にしている。文学はもっと社会的にその世界をひろげ豊かにしなければならないという要求から、長篇や社会小説が求められたのであった。その要求は一つの必然に立つものではあったが、さき・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・けれどもこの戦争の人類の歴史に対してもっている最大の意義は野蛮な独善的な権力意慾に対して、人民の人間的理性の窮極の勝利が闘いとられたということである。世界の民主主義が、近代の仮面をかぶった封建性を打破ったということは、人類史の上での特筆大書・・・ 宮本百合子 「新世界の富」
・・・けっして、保守的で独善的な一部の人のいうように言語・風俗の特殊性だけが決定的条件ではない。それらの不便は、より重要な必要が生れ、要求がおこるなら、なにかの方法が発見され必ず克服されるのである。東京裁判の進行を見よ。 日本の民主化をのぞみ・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・という独善的な結論をかためるためにくっついて行ったのではなかったことは、分明なのである。 この場合、ドン・キホーテになぞらえられている発明家という人物を、さっきのように一行為者としてのマルキシストに置きかえて横光の以上のような結論の性質・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・ 昨今注目されているデカダンス、エロティシズムの傾向も、その作家たちの主張するところによれば、いずれも封建的な日本の偽善と形式的独善の風習への反抗であり、ある主張によれば軽薄にいわれている日本の民主的解放という流行語にたいする辛辣な反措・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・非合法だった時代の党の気の毒な官僚主義、ヒロイズム、独善などがかりに小林多喜二の「工場細胞」に反映しているならば、小林多喜二的身がまえによって――積極的に歴史の課題に答えようとする民主的文学者の行動性で、その弱点は今日の「工場細胞」の現実描・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・ 私は、母に対して、何より先に、まず愛そう、と云う暖さのないものを歎くと共に、Aに対しては、彼の独善的な、小さい、大らかでない心情を、情けなく思わずに居られないのである。 斯様な、デリケートなことは、仮令一日一晩、私が泣き明したとて・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
出典:青空文庫