・・・業的作家ではない生活人という意味であって、その動機は、従来職業作家が、限られた作家的日常の範囲でふれ得ている社会現象、社会感情より昨今の現実は更にひろい複雑なものとなっているのであるから、文学において玄人でない人々が、直接素朴な生活の見聞感・・・ 宮本百合子 「文学のひろがり」
・・・せきは、一言の下に、「玄人さお前さん、一目見たってわかるじゃないか」と断定した。石川は、南洋の無人島で終日遙かな水平線ばかりを見詰めていたときから、上瞼が少し重たく眼尻のところで垂れ下っている船乗りらしい眼付になった。その幅広な視線・・・ 宮本百合子 「牡丹」
・・・ 宵は水のようだから、若い玄人じみた女の声は耳の傍に聴える。「もしもし姉さん、私……わかった? 今ねえ私中西屋さんに居んのよ、よれよれって云うんだもの……姉さん来ない? え? いらっしゃいよ、よ、ね?」「おいおい」 これは太・・・ 宮本百合子 「町の展望」
・・・ 事務室で、チリチリとベルが鳴り、係員がハアハア、ハアハア、と一種の玄人らしさで返事している、あのデンワで、この多忙、繁雑、非能率な国鉄運営の難事業を処理しているのではないだろうか。 各種の軍事施設は、おそらく優秀なラジオをもってい・・・ 宮本百合子 「みのりを豊かに」
出典:青空文庫