・・・とにかくそういうこともあるくらいだから、だれか生理光学に興味をもつ生理学者のうちにこの問題を取り上げてまじめに研究してみようという人があったらたいへんにありがたいと思うので、それでわざわざ本紙のこの欄をかりてこのような夢のような愚見を述べて・・・ 寺田寅彦 「人魂の一つの場合」
・・・旧解剖学教室、生理学教室の廃墟には冬枯れの雑草ががらがらに干からびて哀れである。いかめしい城郭のようなライブラリーも柔らかで憂鬱な霧の薄絹に包まれている。 涙の女はゆっくりゆっくり図書館の方へ歩いて行く。しばらくして、もう一遍振返って見・・・ 寺田寅彦 「病院風景」
・・・粋に物質的な現象、すなわち地震のような現象と、生物的、かつ人為的要素の錯雑した漁獲といったようなものとの間の相関を取り扱うことが科学的に許容されるかどうかという問題については、往々物理学者の側でもまた生理学者の側でも疑問をさしはさむ人が存す・・・ 寺田寅彦 「物質群として見た動物群」
・・・光覚に関する問題は生理学の領分に譲って物理学では非人間的な電磁波を考えるのみである。熱の輻射も無線電信の電波も一つの連続系の部分になってしまって光という言葉の無意味なために今では輻射線という言葉に蹴落とされてしまったのである。 今日のよ・・・ 寺田寅彦 「物理学と感覚」
・・・天文、気象、地質、海洋等に関する自然科学研究に物理学応用の発達して行くのはむしろ当然の事であろうが、普通の意味における物質とはよほど縁の遠い生理学や心理学にまでもだんだん応用が開けて行くようである。 工業における応用も事新しく述べるまで・・・ 寺田寅彦 「物理学の応用について」
・・・心理学者や生理学者の参考になるような事が見つからないとも限らない。それほどでなくとも、少なくも丸善の経営者が書棚の排列を変える時の参考には確かになるだろう。漁業者がたて網の中にはいった魚の回遊する習癖を知っているから、一度はいった魚が再び逃・・・ 寺田寅彦 「丸善と三越」
・・・ このように遺伝の作用をも内にはらむ人間の生命の生物としての構成の微妙さを私たちに知らせるのは生理学であろうが、H・G・ウェルズが書いた「生命の科学」も、それらの科学の業績に立って書かれた本として読まれてもよいものであろう。人間は生物と・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・それに音楽というもの、音の不断の刺戟というものが人間の頭脳に生理学の上からどう影響するものか、非常に研究されるべき神経学、心理学のテーマがあるとも思われます。音楽家の精神内容には、舞台に立つ者として俳優などと共通の古い伝統の感情のほかに、何・・・ 宮本百合子 「期待と切望」
・・・有名な生理学者パブロフが人間の生理の反射機能の実験を犬によって行い、条件反射という重大な発見を、生物的人間の理解に加えた。パブロフは、犬の実験を通して、人間も犬と同じように一定の条件に対して一定の生理的反射を行うことを見出した。それは生理学・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・ 二 人間の生存過程を、学として研究し或る法則、類別を見出す心理学者、生理学者等は、各個人の運命的な時期、年齢を、青年期、更年期と大別しているようです。 青年期は、十六七歳から二十二三歳迄、更年期は丸四・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
出典:青空文庫