・・・もっともこれらの人の名はすでになかば歴史的に固定しているのであるからしかたがないとしても、我々はさらに、現実暴露、無解決、平面描写、劃一線の態度等の言葉によって表わされた科学的、運命論的、静止的、自己否定的の内容が、その後ようやく、第一義慾・・・ 石川啄木 「時代閉塞の現状」
・・・これを考うる時に今日の画一教育が、良いとは言われないのであります。けれど、階梯として何うしても児童等は嫌いなものも、好きなものと、同時に強いられる教育状態にある。私は、これ等の学校を卒業して、社会へ子供達が出た時に、学校生活がどれだけ役立ち・・・ 小川未明 「男の子を見るたびに「戦争」について考えます」
・・・ 学校に於ける画一教育の長所と短所は、すでに世論によって明にされたるが如く、彼等の、社会的という言葉の意味は、個性を没却し、特色を失うということであってはならない、全国一様の教科書は、単に学術的知識を教うるに役立つけれど、その知識が・・・ 小川未明 「新童話論」
・・・政事家は政事家で、自己の議論を実行して世界を画一のものにしようなんという馬鹿気ているのが有るし。文人は文人で自己流の文章を尺度にしてキチンと文体を定めたがッたり、実に馬鹿馬鹿しい想像をもッているのが多いから情ないのサ。親父は親父の了簡で家を・・・ 幸田露伴 「ねじくり博士」
・・・然らば何故にそが十二宮なり二十八宿なりにて劃一せられずして、却て相混合せるものを擧げしか。これ陰陽思想によりて占星家の手に成りしものなるを考へしむる也。その理は十二宮は太陽運行に基き、二十八宿は太陰の運行に基きしものなれば、陽の初なる東とそ・・・ 白鳥庫吉 「『尚書』の高等批評」
・・・ ある人は著者に物理学の教科書を幾何学教科書のような画一的なものにしたいものであると言ったが、自分はそれはむつかしかろうと考える。数学のように最初全く任意に一つの概念を与えあとは解析ばかりでその内容を展開するのと、物理学で自己以外の実在・・・ 寺田寅彦 「物理学と感覚」
・・・私の卒業した官立の女学校は、所謂品のよい、出来のよい画一にはめこまれていて、個性のつよさを愛さなかったから、当時の女学生として、力量は無くはなかったのに、社会的に能力を示す人は非常に少い。あとになってからは、大分変化したが。一級の中でも、女・・・ 宮本百合子 「女の学校」
・・・自分の地方だけの独特性、その価値、その主張を固執する心理の原因は、一方に単調な、画一な中央主義がある場合である。このいずれも亦、十分の民主化のない社会文化におこる危険であり、民主化によってだけ解放される困難なのである。 今日、地方に、文・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・その心理によりすがって、手ばなさないことが、民主という名をもって出現した社会主義的な精神と個性との画一化への抵抗であるとさえ、誤って合理づけている人々があるのである。二様三様の心理は絡みあって、その持主たちを停頓させているばかりではない。こ・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・ ジイドが、長い前置と著しい精神の緊張とをもって輝やかしいソヴェトに見のがすべからざる誤謬と観察したのは、主として、社会生活に現れている「異常な画一」「非個性化」民衆はそこに偽善があろうなどとは夢にも思わない程それに馴らされている「画一・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
出典:青空文庫