・・・ かりに、自分が当夜の主人公であり、画業何十年かの果にこういう席のわり当ての還暦の祝を催されたとしたら、私は戦慄を禁じ得なかったろうと思う。 芸術家は孤独をおそれない勇気を常にもたなければならない。けれども、おそるべき性質の孤独があ・・・ 宮本百合子 「或る画家の祝宴」
・・・ 事実、ケーテ・シュミットはケーテ・コルヴィッツとなっても画業は決して棄てなかった。それどころか、良人カールの良心に従った生活態度とその仕事ぶりとは、婦人画家としてケーテの見聞をひろく深くし、人間生活への理解を大きくした。そしてその素質・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
松山文雄さんがこの頃益々一心に画業をはげんで居られることは友人たちの間で知らぬものはないと思います。 清潔な生活感情をもちつづけて、芸術家が今日成長を重ねてゆくのはまことに一事業です。清潔であって生々とした美感に溢れた・・・ 宮本百合子 「健康な美術のために」
・・・ 芸術における独自性と独得なテンペラメントと、商品としての独自性の必要とはブルジョア画家の画業のうちにかなしくまじりあってかれらをかりたてている。 近代の絵画の一ツの特徴のようになっているディフォーメイションということは、今日、重大・・・ 宮本百合子 「ディフォーメイションへの疑問」
・・・こんなに画業に身をうちこみ、熱心に努力したマリアがどうして、無気力で趣味も低いナポレオン三世時代の古いサロンばかりをたよりにして、苦しめられていたのだろうか。一八六三年にマネは有名な「草上の昼食」をサロンに出して落選し、別に「落選作品のサロ・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」
出典:青空文庫