・・・尤もこれを公にするのはわたくしの発意ではありません。実は先輩里見さとみとん君の煽動によった結果であります。どうかこの広告に憤る読者は里見君に非難を加えて下さい。「侏儒の言葉」の作者。 追加広告 前掲の広告中、「里見君に非・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・勿論その中には、郷土的色彩のあるものもあるけれど、要するにそれ等の認識、発見に目的があるのでなくして、一般の娯楽に供せんとする発意に外ならない。いやしくも、それ等の芸術に依拠して、真の美感を与えよく芸術の使命を果すものありとすれば、それは、・・・ 小川未明 「純情主義を想う」
・・・古人が女子を床の下に臥さしめて男天女地の差別を示したるは古人の発意にして、其意は以て人間万世の法とするに足らず。古人も今人も共に社会の人にして、古今おの/\其時勢あり。我輩は不文なる上世の一例に心酔して今日の事を断ぜんとする者に非ず。畢竟す・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・今ここに提出されているいくつかの問題を、事実上私たちの発意と、集結された民主力とで、一歩ずつ解決に押しすすめてゆく、その一足が、私たちの眼路はるかに、広々とした民主日本、封建から解かれ、美しく頭をもたげた日本女性の立ち姿を予約しているのであ・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
・・・一つは、左翼的な或る作家の経験であるが、そのA氏は日本の企業界で歴史的に有名な或る会社の現実を、芸術に描こうと発意し、日本の実業家列伝中でも巨星であるその会社の創始者のやりかたなどを定型的資本家の観念で考えていた。創作の準備がすすむにつれ実・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
・・・母は自分の父を追懐することの多くなった晩年に於て、祖父が果した文化的な役割の、そういう新しかった面の高い価値を評価することを知らず、ただ祖父の位階勲等や、祖父の発意でたてられたある修養団体で読み上げられる「創祖西村茂樹先生」の面でだけ評価を・・・ 宮本百合子 「わが母をおもう」
・・・しかし細かにこの男の心中に立ち入ってみると、自分の発意で殉死しなくてはならぬという心持ちのかたわら、人が自分を殉死するはずのものだと思っているに違いないから、自分は殉死を余儀なくせられていると、人にすがって死の方向へ進んでいくような心持ちが・・・ 森鴎外 「阿部一族」
出典:青空文庫