・・・なんでも、外国のサアカスの一団員として日本に来て、そのサアカスから捨てられ、発奮して新潟で洋食屋を開き大成功したのだとかいう話でした。 生徒が十五、六人、それに先生が二人、一緒に晩ごはんを食べました。生徒たちも、だんだんわがままな事を言・・・ 太宰治 「みみずく通信」
・・・いのを、なろう事ならしないで用を足してそうして満足に生きていたいというわがままな了簡、と申しましょうかまたはそうそう身を粉にしてまで働いて生きているんじゃ割に合わない、馬鹿にするない冗談じゃねえという発憤の結果が怪物のように辣腕な器械力と豹・・・ 夏目漱石 「現代日本の開化」
・・・ 今の人から見れば、完全かも知れないが実際あるかないか分らない理想的人物を描いて、それらの偶像に向って瞬間の絶間なく努力し感激し、発憤し、また随喜し渇仰して、そうして社会からは徳義上の弱点に対して微塵の容赦もなく厳重に取扱われて、よく人・・・ 夏目漱石 「文芸と道徳」
出典:青空文庫