・・・ 本当の知的生活が多くのアメリカ人の日常生活から失われているということについては展望十一月号座談会の「アメリカ文化と日本」の中で、都留重人氏がこまかく具体的に語っておられます。都留氏の話は非常に参考になる。キャナライゼーションということ・・・ 宮本百合子 「アメリカ文化の問題」
・・・彼女は、彼女の父親の代から属していた有産階級と絶縁し、家庭教師その他知的職業によって生活する一人の無産者となった。 アンネットは美しい。若い。然し恋愛を或る点恐怖している。アンネットは一旦自分を譲ったら徹底的に譲歩する自分の性質、並に必・・・ 宮本百合子 「アンネット」
・・・以下三十篇ちかい歴史的素材の小説も、やはり歴史小説でないことでは芥川の扱いかたに似ているが、芥川龍之介が知的懐疑、芸術至上の精神、美感、人生的哀感の表現として過去に題材を求めたのとは異って、菊池寛は、自身が日常に感じる生活への判断をテーマと・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・落付いて考えて見ると或る国民を代表する程の文学者は、知的、感情的両方面に、自ら最もよく、その国語を使った者ではありますまいか。 国語の性質、普及の範囲などと云うことは、純粋に芸術に没頭した場合、決して、第一浮んで来る問題ではないと思いま・・・ 宮本百合子 「芸術家と国語」
・・・日本のいく久しい封建社会の歴史にもたらされて、日本の知性は、強靭な知的探求力とその理づめな権威力をもつより、いつも感性的である。その日本の感性的な知性が西欧のルネッサンスおよびそれ以後の人間開花の美に驚異したのが「白樺」の基調であった。・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・――都会人口の九三パーセント、農村人口の七九・四パーセントが過去の知的暗黒を追っぱらいつつあるのだ。――サア、本を! 新聞を!―― 字さえ読めればソヴェト同盟の勤労者にとって読みたいもの、よまねばならぬというものが山・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・で豊富な生活力が自然の豊かさそのままの活力と現実性とであふれ動く姿として母の生涯を描いたと同じように、世代の動きによってスーザンによりひろい知的な領域と芸術の天分とをもたらした。そして、やはり、判断と行動との原動力を、常に「どうしてもしなけ・・・ 宮本百合子 「『この心の誇り』」
・・・ 今日の日本では所謂知的な読者でさえ、作品と作家の生きかたというものの間にある必然について全く感覚を喪っている。これは、どういうことなのだろう。 三 この二三年らい日本のあらゆる事情が激変しているが、特・・・ 宮本百合子 「今日の読者の性格」
・・・このような形で残されている日本的なものの中の知的ならざる影は、今日のような作家の受動的気分の時期に案外にもゆるがせに出来ない退嬰性、無批判性となって甦っていることが認められる。近代日本が、政治経済に於て官製であったと同じように文化も官製の性・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・そして反主知的・反合理主義的立場にあること等が、当時日本のプロレタリア文学の敗北につれて自身の動向をも失いつつ猶その世界観と文学とに反撥していた知識人を「行動主義」文学理論へひきつけた一つの、だが最もつよい可能性となっていたことである。・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
出典:青空文庫