・・・そして、日本を輿論のない軍力専制の鎖につないで、遂に歴史的な破局に導いた。尾崎秀実氏とその国際的な同志たちとは、日本の軍事権力が最後ののたうちで最も悪逆になり狂暴となったその時期の犠牲であったのである。 非道な力は終焉に瀕している、それ・・・ 宮本百合子 「人民のために捧げられた生涯」
これまでの日本はいつも天下りの戦争にならされていました。天皇制の封建的な、絶対的な教育の下で、人民は戦争を「思惑の加った災難」として、無批判に服従してきました。 そして今日の破局に到りました。日本に戦争反対の心がなかっ・・・ 宮本百合子 「戦争と婦人作家」
・・・王と王との国際性から、資本家の・軍人の国際性、それが第二次世界大戦でこのように破局を示したあとには、人類社会の根である働く人民と人民との間の幸福への真面目な協力しかあり得ない。民主的な国際性とはきょうのこの歴史の段階をさしている。世界平和と・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・特に書かれている限りでは立派な、理解の深い青年であると思われる男達とさえ、アグネスは次々と破局をもって別れている。それはどういうのだろうという疑問が出たということであった。 この言葉は私の興味をよびおこし、よほど前その一部分を読んだきり・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・は昔のロシアの苦しい、つきつめた正直なこころの破局的な象徴として、文学史の上に、今日一つのゆるがない場所をしめている。「稲草人」「古代英雄の石像」などが、中国文学史の上で中国の悲傷、誠意、人民の惨苦への愛と民衆創造の希望を象徴した作品として・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・ けれども、この考えかたが、現実の社会生活の矛盾や相剋のなかで、どんな破局を経験して来ているかということは、十九世紀以来今日までの文学古典の傑作が扱っているテーマを思い浮べるだけで十分である。ストリンドベリーは、何故あのように女性に対し・・・ 宮本百合子 「貞操について」
・・・けれども彼女の場合には、自覚されていなかったそういう経験主義的な生活振りを、今日の私達が見直すと、そこにある破局は畢竟彼女がリアリストでなかったこと、或は彼女の熱と力との放散を質的に高める社会的な広範な基礎を生活の中にもっていなかったという・・・ 宮本百合子 「問に答えて」
・・・次第に破局に近づくけいれんがあらわれはじめた。弟の家族は疎開した。私が残った。八月にパリが陥落した。アンドレ・モーロワの『フランス敗れたり』が日本でひろく読まれたのは、これから間もない頃であった。この本は政界裏のぞき的なサロンゴシップで・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・更に出版権にからまる絶え間ない訴訟事件があり、代議士立候補のための、進んでは大臣になるための政見を発表し、しかも時々バルザックは一八二五年の破局にもこりず熱病にかかったように大仕掛の企業欲にとりつかれ、サルジニアの銀鉱採掘事業や、或る地勢を・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・この神経質で受動的に敏感な男が最後の破局として突発的殺傷をすることは前に述べたが、私としてはこの作者が所謂良心的という人間を描く時に、多くこういうタイプの弱い人間をその面でだけ取り上げて来ていることに或る注目を引かれる。この作者にとって良心・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
出典:青空文庫