・・・という看板の手前、恥かしい想いをしながらこっそり医者をよんで診せると、「――こりゃ、神経痛ですよ。まあ、ゆっくり温泉に浸って、養生しなさい。温泉灸療法でもやることですな」 と、知っていたのか、簡単に皮肉られて、うろたえ、まる三日間二・・・ 織田作之助 「勧善懲悪」
・・・なお二百円の金を無理算段して、神経痛だという瞳を温泉へ連れて行った。十日経って大阪へ帰った。瞳を勝山通のアパートまで送って行き、アパートの入口でお帰りと言われて、すごすご帰る道すうどんをたべ、殆んど一文無しになって、下味原の家まで歩いて帰っ・・・ 織田作之助 「雪の夜」
・・・の皮下注射方もっとも適当にして、医師も常にこの方に依頼して一時の急に応ずといえども、その劇痛のよって来る所の原因を求めたらば、あるいは全身の貧血、神経の過敏をいたし、時候寒暑等の近因に誘われて、とみに神経痛を発したるものもあらん。全身の貧血・・・ 福沢諭吉 「政事と教育と分離すべし」
出典:青空文庫