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・・・一体僕は稟賦と習慣との種々な関係から、どこに出ても傍観者になり勝である。西洋にいた時、一頃大そう心易く附き合った爺いさんの学者があった。その人は不治の病を持っているので、生涯無妻で暮した人である。その位だから舞踏なんぞをしたことはない。或る・・・
森鴎外
「百物語」
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・・・しかしある人は他の人よりも多くの稟賦を恵まれ、そのより多くの力をもって指導者の位置につくことができる。あるいは、つかねばならぬ。生来の芸術家はこの種の人である。いかに平民主義が栄えても、天与の才に対する尊敬の念は失わるべきでない。――この点・・・
和辻哲郎
「世界の変革と芸術」