・・・ 八 最後の立場――運命的恋愛 しかしこうした希望はすべて運命という不可知な、厳かなものを抜きにして、人間的規準をもって、きわめて一般的な常識的な、立言をしているにすぎないのである。 最も厳かな世界では一切の規準・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・詰る所婦人に主君なしとの立言は、封建流儀より割出しても無稽なりと言うの外なし。此辺は枝葉の議論として姑く擱き、扨婦人が夫に対して之を軽しめ侮る可らずとは至極の事にして婦人の守る可き所なれども、今の男女の間柄に於て弊害の甚しきものを矯正せんと・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・ そもそも本書全面の立言は、人生戸外の公徳を主として、家内私徳の事には深く論及するところを見ず。然るに鄙見はまったくこれに反し、人間の徳行を公私の二様に区別して、戸外公徳の本源を家内の私徳に求め、またその私徳の発生は夫婦の倫理に原因する・・・ 福沢諭吉 「読倫理教科書」
・・・ 以上の立言は我輩が勝、榎本の二氏に向て攻撃を試みたるにあらず。謹んで筆鋒を寛にして苛酷の文字を用いず、以てその人の名誉を保護するのみか、実際においてもその智謀忠勇の功名をば飽くまでも認る者なれども、凡そ人生の行路に富貴を取れば功名を失・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・しかし哲学者として立言するには至らなかった。歴史においては、初め手を下すことを予期せぬ境であったのに、経歴と遭遇とが人のために伝記を作らしむるに至った。そしてその体裁をして荒涼なるジェネアロジックの方向を取らしめたのは、あるいはかのゾラにル・・・ 森鴎外 「なかじきり」
出典:青空文庫