・・・何故に悪が善に勝つかということほど純直な童心をいたましめるものはないからだ。 彼は世界と人倫との究竟の理法と依拠とを求めずにはいられなかった。当時の学問と思想との文化的所与の下に、彼がそれを仏法に求めたのは当然であった。しかし仏法とは一・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・それはいやらしいくらいに、くどくどと語り、私が折角いい案配に忘れていたあの綴方の事まで持ち出して、全く惜しい才能でした、あの頃は僕も、児童の綴方に就いては、あまり関心を持っていなかったし、綴方に依って童心を伸ばすという教育法も存じませんでし・・・ 太宰治 「千代女」
童心 うちから二人出征している。一人は世帯持ちであるがもう一人の方はひとり者だから、手紙をうち気付でよこす約束にして出発して行った。 行ったきり永い間何のおとさたもなかった。四ヵ月ほどして、ハガキ・・・ 宮本百合子 「くちなし」
・・・ 童心のきよらかさとはどういうものだろう。子供はわるいことをする。ひどいこと、すごいこと、そのどっちもする。子供の心にある憎悪は大人を恐怖さえさせる。それでも子供の心がきよらかだというのは、どうしてだろう。子供は、憎らしいから、うん・・・ 宮本百合子 「子供の世界」
・・・ 今日の観衆は、又、大人の感情で子役をつかう所謂童心を描く映画に対して、もっと清潔であってもいいのだと思う。無制限に甘え合わないでいいと思う。文学の作品としてそういう境地に種々の問題があるように、映画にしても考え直さるべきところがある。・・・ 宮本百合子 「観る人・観せられる人」
出典:青空文庫