・・・ことに昨今のように米価の高い時はなおさらの損である。一日も早く職業を与えれば、父兄も安心するし当人も安心する。国家社会もそれだけ利益を受ける。それで四方八方良いことだらけになるのであるけれども、その秀才が夢中に奔走して、汗をダラダラ垂らしな・・・ 夏目漱石 「道楽と職業」
・・・相場師と地主との庫で、米価はつり上げられるが、その米を辛苦して作った農村には何がのこされているか。朝鮮、台湾の殖民地で搾られる大衆の暮しは話のほかだ。 プロレタリア・農民の階級的攻撃を挫くために、支配階級はありとあらゆる文化機関、印刷物・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・ 米価惨落・生糸惨落・造船事業の縮小は来年の春までに数万人の失業者を更に街頭に送り出すであろう。 J・O・A・K! 梅村蓉子は今度結婚することになりました。 浜口首相の腹へピストルの玉がとび込んだのは日本へかえって二日目ぐらいの・・・ 宮本百合子 「ニッポン三週間」
・・・過しており、芸術に向う心では釣月軒として自分と周囲の生活とを眺めている宗房の目に映る寛永年代の江戸は、家光の治世で、貿易のことがはじまり、大名旗本の経済は一面の逸遊の風潮とともに益々逼迫しつつあった。米価はひどい騰貴で商人は肥え、庶人は困窮・・・ 宮本百合子 「芭蕉について」
・・・郡山が膨張して、附近の村々の若いものはそこの工場で働くようになったし、大戦のころ米価暴騰につられて田地を買い込んだ農民たちは忽ちその借金なしに追い立てられることとなり、村の生活へは明け暮ひろい流れで町の息吹きが動きはじめた。 やがて、そ・・・ 宮本百合子 「村の三代」
出典:青空文庫