・・・そうすりゃ素人目にも快くおなんなすった解りが早くッて、結句張合があると思ったんですが、もうお医者様へいらっしゃることが出来たのはその日ッきり。新さん、やっぱりいけなかったの。 お医者様はとてもいけないって云いました、新さん、私ゃじっと堪・・・ 泉鏡花 「誓之巻」
・・・なるほど素人目にも、この二三日の容体はさすがに気遣われたのであるが、日ごろ腎臓病なるものは必ず全治するものと妄信していたお光の、このゆゆしげな医者の言い草に、思わず色を変えて太胸を突いた。「まあ! じゃその尿毒性とやらになりますと、もう・・・ 小栗風葉 「深川女房」
・・・しかしまだ雌雄の区別が素人目にはどうも判然としない。よく見るとしっぽに近い背面の羽色に濃い黒みがかった縞の見えるのが雄らしく思われるだけである。あひるの場合でもやはりいわゆる年ごろにならないと、雌雄の差による内分泌の分化が起こらないために、・・・ 寺田寅彦 「あひると猿」
・・・この建物はきわめて原始的であるが一種の均整の美をもっている。素人目にはわが大学の安田講堂よりもかえって格好がいいように思われる。デテイルがないだけに全体の輪郭だけに意匠が集注されるためかもしれない。 インパラという動物の跳躍も見物である・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・十回目あたりからベーアのつけていた注文の時機が到来したと見えて猛烈をきわめた連発的打撃に今までたくわえた全勢力を集注するように見え、ようやく疲れかかったカルネラの頽勢は素人目にもはっきり見られるようになった。 第十一回目のラウンドで、審・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・三人のプレイが素人目に見てもそれぞれちゃんとはっきりした特徴があって面白い。クラブと球との衝撃によって生ずる音の音色まで人々で違うような気がするのである。科学者のM君は積分的効果を狙って着実なる戦法をとっているらしく、フランス文学のN君はエ・・・ 寺田寅彦 「ゴルフ随行記」
・・・こういう点も、私の素人目に安心が出来るし、将来大きい作品をつくって行く可能性をもった資質の監督であることを感じさせた。 この作品が、日本の今日の映画製作の水準において高いものであることは誰しも異議ないところであろうと思う。一般に好評であ・・・ 宮本百合子 「「愛怨峡」における映画的表現の問題」
・・・ 大槻正男君の話によると、京都の風土は植物にとって非常に都合のよいものであるという。素人目にもそれはわかる。水の豊富なこと、花崗岩の風化でできた砂まじりの土壌のことなどは、すぐ目についてくる。ところでその湿気や土壌が植物とどういうふうに・・・ 和辻哲郎 「京の四季」
出典:青空文庫