・・・ 緊張した社会主義建設期にある。終局の目的に向って社会を押しすすめて行く上に、必要なもの、役に立つものと、そうでないものとがある。それはどうしたって区別して、それはそれとして扱って行かなくちゃならない。常識で考えたって明かなことさ。そ・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・それだから一本調子でやって行くといっても、目的があって、そこへやろうという意味において一本調子であるけれども、或る人に云わせれば、どこに終局の目的があるか分らないという位、弾力をもって強く柔軟にやってゆくのです。 優生学、ユーゼニックス・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・ 人類中の、少数の人々にとってはいかなる地上的幸福も悲惨も終局、内奥の人格に些の汚点をつけるにも足りないと云う特殊な場合はあります、非常に偉大な人格は、全く独立した人格で、何処にあっても、圏境を超えてそれが素で働いて行くと云うことなので・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
・・・そう考えている彼等は、今度ゴーリキイがソヴェトへ帰って何を見るか、そして何を云うか、終局に自分自身をどう処置するか、ということを貪慾な目つきで見守っていた。彼等が見出そうと欲したのは五年目に見るソヴェトに対するゴーリキイの失望と、偉大な声楽・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人」
・・・ ゴーリキイは、ロマン・ローランなどと共に今日の世界がその人を持っていることを誇る偉大な芸術家の一人であるが、特にゴーリキイはその名を聞いたとき人々の心に一種云うに云われぬ暖かさ、親しさを感じさせ、終局に於て人類は不合理や穢辱に堪えきれる・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
・・・殊にそのため部下の諸将と争わなければならなかったこの夜の会議の終局を思うと、彼は腹立たしい淋しさの中で次第にルイザが不快に重苦しくなって来た。そうして、彼の胸底からは古いジョセフィヌの愛がちらちらと光を上げた。彼はこの夜、そのまま皇后ルイザ・・・ 横光利一 「ナポレオンと田虫」
・・・今や明日の文学は、その終局の統率的使命を以て、健康に剛健に、朗々として政治を併呑しなければならない。黙示の頁を剥奪すべき勇敢なる人々は、大いなる突喊の声を持たねばならぬ。 横光利一 「黙示のページ」
・・・そのためには私のすべての戦いを終局まで戦わなくてはならぬ。勝利を得るまでの分裂した生活の惨めさは、目下の自分の力ではいかんともし難い。 私は一つのことを悟り得た。迷いと屈托とに遅滞しているゆえをもって、直ちにその人の人格を卑しめてはいけ・・・ 和辻哲郎 「生きること作ること」
・・・デュウゼにとっては動作は終局でない。真の演技の邪魔となるに過ぎない。彼女にとっては最も大なる瞬間は最も深い静寂の時である。情熱を表現するにはこれを抑制した所を見せる。内心の擾乱をじっと抑えて最後に痛苦を現わす眼のひらめき、えくぼの震えとなる・・・ 和辻哲郎 「エレオノラ・デュウゼ」
出典:青空文庫