・・・要は結局エイゼンシュテインが視覚的陪音と呼び、あるいはむしろ視覚的結合音と呼ばるべきものを生み出すにあるのである。この結合によって生じるものはもはや決して「花」ではない全然別の次元の世界に属するものであり、そうして、それはただその二つあるい・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・この場合でも一般の日本語に km なる結合の起こる確率を考慮に入れて補正すればよいが、これはしばらく省略するほかはない。しかしこれは現在の場合結果の桁数を変えるほどの影響がありそうもないことは少しあたってみてもわかると思う。 Turum・・・ 寺田寅彦 「火山の名について」
・・・はメートル制の採用と振り子の使用との結合から生まれた偶然の産物であるが、このだいたいの大いさの次序を制定したものはやはり人体の週期であるという事はほとんどたしからしく自分には思われる。 さて、われわれは時の長さをこの秒で測ると同時に、ま・・・ 寺田寅彦 「空想日録」
・・・などもhまたはfにrの結合したものである。full, voll, πλω なども連想される。 夏と熱とはいずれもnとtの結合である。現代のシナ音では、熱は jo の第四声である。「如」がジョでありニョであり、また「然」がゼンでありまたネ・・・ 寺田寅彦 「言葉の不思議」
・・・震動の筋肉感や、耳に聞こゆる破壊的の音響や、眼に見える物体の動揺転落する光景などが最も直接なもので、これには不可抗的な自然の威力に対する本能的な畏怖が結合されている。これに附帯しては、地震の破壊作用の結果として生ずる災害の直接あるいは間接な・・・ 寺田寅彦 「地震雑感」
・・・熱力学にエントロピーの観念の導入され、またエントロピーと公算との結合を見るに至りし消息もまたここに至って自ずから首肯さるべし。 安定や公算の意味に関する議論はしばらく措き、種々の可能法ある場合におのおのの公算を比較する時、吾人の経験はそ・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・即ち文学上から見てローマンチシズムは偽を伝えるがまた人の精神に偉大とか崇高とかの現象を認めしめるから、人の精神を未来に結合さする。ナチュラリズムは、材料の取扱い方が正直で、また現在の事実を発揮さすることに勉むるから、人の精神を現在に結合さす・・・ 夏目漱石 「教育と文芸」
・・・而して斯く歴史的地盤から構成せられた特殊的世界が結合して、全世界が一つの世界的世界に構成せられるのである。かかる世界的世界に於ては、各国家民族が各自の個性的な歴史的生命に生きると共に、それぞれの世界史的使命を以て一つの世界的世界に結合するの・・・ 西田幾多郎 「世界新秩序の原理」
・・・そこにデカルトと結合するものがあると思う。しかもヘーゲルはデカルトと異なって、そこに新なる実在と論理の原理とを把握した。それがヘーゲルの弁証法である。ヘーゲルによって、始めて自己自身によってあり、自己自身を限定する真実在の哲学的原理が把握せ・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
・・・つまり東洋の儒教的感化と、露文学やら西洋哲学やらの感化とが結合って、それに社会主義の影響もあって、ここに私の道徳的の中心観念、即ち俯仰天地に愧じざる「正直」が形づくられたのだ。 併しこれは思想上の事だ。これが文学的労作と関係のある点はど・・・ 二葉亭四迷 「予が半生の懺悔」
出典:青空文庫