・・・そういう場合のあることは昔からも知られていたであろうが、それが欧州大戦以後、特に外科医の方で注意され問題にされ研究されて、今日では一つの新療法として、特殊な外科的結核症や真珠工病などというものの治療に使う人が出てきた。こうなると今度は、それ・・・ 寺田寅彦 「蛆の効用」
・・・それで肺炎から結核になろうと、なるまいと、そんな事は念頭にも置かなかった。肺炎は必ずなおると定ったわけでもなし、一つ間違えば死ぬだろうに、あの時は不思議に死と云う事は少しも考えなかったようである。自分は夭死するのだなと思った事はあったが、死・・・ 寺田寅彦 「枯菊の影」
・・・そういう場合のあることは昔からも知られていたであろうが、それが欧州大戦以後特に外科医のほうで注意され問題にされ研究されて、今日では一つの新療法として特殊な外科的結核症や真珠工病などというものの治療に使う人が出て来た。こうなると今度はそれに使・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・「ところがねえ、次が大へんなんですよ、耕牧舎の飼牛がね、結核にかかっていたんですがある日とうとう死んだんです。ところが病気のけだものは死んだら棄てなくちゃいけないでしょう。けれども何せ売れば二、三百にはなるんです。誰だって惜しいとは思い・・・ 宮沢賢治 「バキチの仕事」
・・・日本が世界第一の結核国であり、若い女の死亡率が最高であることも考えられる。 工場の昨今では、早出、残業、夜業は普通であるし、設備の不十分な下請け工場の簇出と不熟練工の圧倒的多数という条件は、工場内での災害をこれまでの倍にした。警視庁がこ・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・どこの病院でも、看護婦は不足です。結核療養所の看護婦が、過労していないという例は一つもありません。「病気と私」を読んだすべてのひとは、患者が床の上におとした物を自分で拾うことを禁じている。そのように十分の看護婦が配置されているサナトリアムの・・・ 宮本百合子 「生きるための協力者」
・・・ お医者の云った事は、お君に解らなかったけれ共、十中の九までは、長持ちのしない、骨盤結核になって、それも、もう大分手おくれになり気味であった。 流石のお金も、びっくりして、物が入る入ると云いながら翌日病院に入れて仕舞った。 いよ・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・つづいて、野呂栄太郎が検挙され、このひとは宿痾の結核のために拷問で殺されなくても命のないことは明白であると外部でも噂されている状態だった。 一九三三年は、日本の権力が、共産党員でがんばっている者は殺したってかまわない、という方針を内外に・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・漱石は「二葉亭露西亜で結核になる。帰国の承諾を得た所経過宜しからず入院の由を聞く。気の毒千万也。大阪朝日十万円で社を新築すと素川よりきく。妻が寅彦の所へ餞別をもつて行く。シャツ、ヅボン下、鰻の罐詰、茶、海苔等なり。電話にて春陽堂へ『文学論評・・・ 宮本百合子 「含蓄ある歳月」
・・・マーニャの家は、貧しいポーランドの貧しい小貴族の端くれで、経済的には決して楽でなかったことは、マーニャの生れた時分既に結核の徴候があらわれていて閉じこもり勝であった美しくて音楽ずきの母が、小さいマーニャのために自分で靴を縫ってやっているとい・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人の命の焔」
出典:青空文庫