・・・祭祀その他宗教的儀式と連関していろいろの巫術魔術といったようなものも民族の統治者の主権のもとに行なわれてそれが政治の重要な項目の一つになっていたように思われる。 そうした祭祀や魔術の目的はいろいろであったろうが、その一つの目的はわれわれ・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・ いくら資本主義の統治下にあって、鰹節のような役目を勤める、プロレタリアであったにしても、職業を選択する権利丈けは与えられているじゃないか。 待って呉れ! お前は、「それゃ表面のこった、そんなもんじゃないや、坊ちゃん奴」と云おうとし・・・ 葉山嘉樹 「労働者の居ない船」
・・・それは、昔のヨーロッパが、封建諸王によって分割統治されていた時代の首都が、既に一定の文化水準に達していたということも原因である。けれども、もっと重大なことは、それらの封建都市は、やがて近代社会の発達とともに次第に市民的都市となって行ったとい・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・ ワグナーは晩年には、音楽は民衆をたやすく統治するための有効な手段だと皇帝に書いて、オペラの隆盛を援助させた。愚民政策としてすすめている。しかも一九三〇年には生みの親のブルジョア社会の感覚が古典的オペラへの興味からくずれ出してレヴューだ・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・自分たちの祖国のせまくとも誇りあるべき土の上に、浮浪児や失業者や体を売って生きる女性群を放浪させながら、少数のものが自覚のおそい日本人民の統治しやすさについて談笑しながら彼等の国際的なハイボールを傾ける姿を、わたしたち日本の女は、やはり黙っ・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・第一次ヨーロッパ大戦のとき、日本は最後の段階に連合国側に参加してチンタオだの南洋諸島だのを、ドイツから奪って統治するようになった。第一次大戦のとき日本で儲けたのは海運業者であった。船成金ができて、金のこはぜの足袋をはいたとさわがれたが、一般・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・フロレンスが、物心づいて世の中を眺めはじめた一八四五、六年代は、イギリスがヴィクトーリア女皇の統治の下に近代社会として未曾有の発展をとげた画期的な時期であった。商工業の急激な進歩、産業界全面の革新は一方に大英国の富をつみ上げてゆくと一緒に、・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・という一貫した主張をもっており、その主意によって統治を受けた。やっと生活出来る程度の収入だけを残して、あとは皆地頭、領主に取られて来た。農民の女性の生活というものは、全く物を言う家畜という有様であった。しかしこの時代の彼女達の生活が文化の上・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫