・・・…… 呼吸が切れ、目が眩むと、あたかも三つ目と想う段の継目の、わずかに身を容るるばかりの石の上へ仰ぎ倒れた。胸は上の段、およそ百ばかりに高く波を打ち、足は下の段、およそ百ばかりに震えて重い。いまにも胴中から裂けそうで、串戯どころか、その・・・ 泉鏡花 「開扉一妖帖」
・・・それは、いつ、ぷすりと継ぎ目がぬけるか分らないのだ。その捲綱が新しいやつに取りかえられていた。廃坑の入口は、塞がれた。横坑から分岐した竪坑や、斜坑には、あわてゝ丸太の柵を打ちつけた。置き場に困る程無茶苦茶に杉の支柱はケージでさげられてきた。・・・ 黒島伝治 「土鼠と落盤」
・・・ もしも、レコードと現場の放送との継ぎ目を自由に、ちょうどフィルムをつなぐようにつなぐことができれば、すでに故人となった名優と現に生きている名優とせりふのやり取りをさせることもできるであろう。九代目X十郎と十一代目X十郎との勧進帳を聞く・・・ 寺田寅彦 「ラジオ・モンタージュ」
・・・球の皮と皮との継ぎ目には“К”とスタンプが押してある。 一ヵ月経った。モスクワの春がむら気に近づいてきた。雪がひどく降った。 雪の中を私はいつも変らぬ我が道伴れとともに借室を見に行った。そこから日本大使館へ廻った。本館の帝政時代のま・・・ 宮本百合子 「シナーニ書店のベンチ」
・・・彼女の体に響いているレールの継ぎ目一つ一つはかつて「十月」、たとえばナターリアの小さい行跡が記録されないと同じく記録されない革命的プロレタリアートの行跡によって獲得されたものであることを。ペテログラードはレーニングラードに変った。そこにやは・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
出典:青空文庫