「小説の書けぬ小説家」の後に、「汽車の罐焚き」を読むことが出来たのは、一つの心持よいことである。この感じは作家中野重治の友達である私一人の感情ではなかろうと思う。中野さんが誰かに、もう当分私小説はおやめだ、と云ったというよう・・・ 宮本百合子 「鼓舞さるべき仕事」
・・・ 然しながら、現実は川端、尾崎両氏の芸術的現実に終っていないのであるから、一方に真の大衆の生活感情をその文学の中に再現しようという努力がつづけられており、中野重治氏「汽車の罐焚き」徳永直氏「飛行機小僧」「八年制」「はたらく一家」窪川稲子・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ このような文学に於ける社会的見地の抹殺と客観的な評価の消滅が充ちていたとき、最低限の形ででも民衆の日常の現実を文学の対象として描こうとした努力から中野重治「汽車の罐焚き」や徳永直の「八年制」などが書かれた。 この年七月蘆溝橋に轟い・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
出典:青空文庫