・・・彼等はそこへ到着すると、一々罪状を読み聞かされた後、太い角柱に括りつけられた。それから右にじょあんなおすみ、中央にじょあん孫七、左にまりやおぎんと云う順に、刑場のまん中へ押し立てられた。おすみは連日の責苦のため、急に年をとったように見える。・・・ 芥川竜之介 「おぎん」
・・・という罪状である。 板倉周防守、同式部、同佐渡守、酒井左衛門尉、松平右近将監等の一族縁者が、遠慮を仰せつかったのは云うまでもない。そのほか、越中守を見捨てて逃げた黒木閑斎は、扶持を召上げられた上、追放になった。 ――・・・ 芥川竜之介 「忠義」
・・・もっとも、淘汰した者も全然ないわけではなく、たとえば、売上げ金費消の歴然たる者は、罪状明白なりとして馘首、最初の契約どおり保証金は没収した。 しかし、これとても全然はなからの計画ではなく、冷酷といってしまえばそれまでだが、敢えて「あばく・・・ 織田作之助 「勧善懲悪」
・・・私などは、無実の罪で法廷に立たせられても、その罪に数十倍するくらいの、極刑に価いするくらいの罪状を、検事にせつかれて、止むなく告白するかも知れない。もとより無形の犯罪であるが、そのときの私の陳述が、あまりにも微に入り細をうがって、いかにも真・・・ 太宰治 「春の盗賊」
出典:青空文庫