・・・他日機会があったら、もう少し詳しくこれらのおのおのについて検討を試み、さらにその結果に基づいて映画の未来の可能性について具体的な考察を遂行したいと思っている。 なお、このほかに、写真レンズの影像の特異性や、フィルムの感光能力の特異性から・・・ 寺田寅彦 「映画の世界像」
・・・こんなことは右の句の鑑賞にはたいした関係はないことであろうが、自分はこういう瑣末な物理学的の考察をすることによってこの句の表現する自然現象の現実性が強められ、その印象が濃厚になり、従ってその詩の美しさが高まるような気がするのである。・・・ 寺田寅彦 「思い出草」
・・・ それで、ただここにはほんの一つの空想、ただし多少科学的の考察に基づいた空想あるいは「小説」を備忘録として書き留めておく。もしこれらの問題に興味をもつほんとうの考証家があればありがたいと思うまでである。 一 ・・・ 寺田寅彦 「怪異考」
・・・ 案内者のいう所がすべて正しく少しの誤謬がないと仮定しても、そればかりに頼る時は自身の観察力や考察力を麻痺させる弊は免れ難い。何でも鵜呑みにしては消化されない、歯の咀嚼能力は退化し、食ったものは栄養にならない。しかるに如何なる案内者とい・・・ 寺田寅彦 「科学上における権威の価値と弊害」
・・・ それにもかかわらず、以上の考察は一つの興味ある空想を示唆する。すなわち、人間の思惟の方則、情緒の方則といったようなものがある。それは、まだわれわれのだれも知らない微分方程式のようなものによって決定されるものである。われわれはその式自身・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・従来の地名の研究には私の知る限りこの必要条件の考察が少しも加わっていないではないかと思われる。この条件が何であるかについては他日また愚見を述べて学者の批評を仰ぎたいと思っている。 寺田寅彦 「火山の名について」
・・・しかし静に考察すれば芸術家が土耳古の山河風俗を愛惜する事は、敢て異となすには及ばない。ピエール・ロチは欧洲人が多年土耳古を敵視し絶えずその領土を蚕食しつつある事を痛嘆して『苦悩する土耳古』と題する一書を著し悲痛の辞を連ねている。日本と仏蘭西・・・ 永井荷風 「正宗谷崎両氏の批評に答う」
・・・一たび考察をここに回らせば、世態批判の興味の勃然として湧来るを禁じ得ない。是僕をして新聞記者の中傷を顧みず泰然としてカッフェーの卓子に倚らしめた理由の第四である。 僕のしばしば出入したカッフェーには給仕の女が三十人あまり、肩揚のある少女・・・ 永井荷風 「申訳」
・・・としてしか一般の常識の上にとりあげられなかった両性の社会関係についての考察が、この本の最後に集録されている文章の中では、はっきりと明日の、より幸福の約束された社会をつくるための、男女の新しい社会的協力としての面からとり上げられている。「異性・・・ 宮本百合子 「あとがき(『幸福について』)」
・・・そのようなミッドウェイの敗北をひきおこした戦争の本質について、元参謀長は歴史的な考察と反省を行おうとしていないのである。ただ現象についてだけ語っている。 これは、果して歴史の「真実を語る」方法だろうか。根本の原因にふれないで、そこに生じ・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
出典:青空文庫