・・・いまでも、栄養不良の者は肝油たらいうてやっぱり油飲むやおまへんか。それ考えたら、石油が肺に効くいうたことぐらいは、ちゃんと分りまっしゃないか。なにが迷信や、阿呆らしい」 女はさげすむような顔を男に向けた。 私は早々に切りあげて、部屋・・・ 織田作之助 「秋深き」
・・・その彼へスープ一合、黄卵三個、肝油球。昼はお粥にさしみ、ほうれん草の様なもの。午後四時の間食には果物、時には駿河屋の夜の梅だとか、風月堂の栗饅頭だとかの注文をします。夕食は朝が遅いから自然とおくれて午後十一時頃になる。此時はオートミルやうど・・・ 梶井久 「臨終まで」
・・・また海胆や塩辛類の含有する回生の薬物についても科学はまだ何事をも知らないであろう。肝油その他の臓器製薬の効能が医者によって認められるより何百年も前から日本人は鰹の肝を食い黒鯛の胆を飲んでいたのである。 これを要するに日本の自然界は気候学・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・は劇剤にして、肝油・鉄剤は尋常の強壮滋潤薬なり。劇痛の患者を救わんとするには「モルヒネ」の皮下注射方もっとも適当にして、医師も常にこの方に依頼して一時の急に応ずといえども、その劇痛のよって来る所の原因を求めたらば、あるいは全身の貧血、神経の・・・ 福沢諭吉 「政事と教育と分離すべし」
・・・また、太陽燈浴室が現れるにつれて、児童の弁当の問題、学校で肝油配給をやり、また栄養給食について考慮している、そういう、現実的な部分が全くカメラからとりこぼされている。高輪の小学校でそれは必要ないことであったかもしれないが、日本の小学校と給食・・・ 宮本百合子 「映画の語る現実」
出典:青空文庫