・・・問題となって、そこの女生徒全部を軍法会議にまわすと云って脅かした。学校当局はあわてて生徒たちに謝らせようとした。 けれども、生徒たちは、皆で軍法会議にまわされるならば、それは仕方がない。軍法会議の席で、初めに乱暴をしたのは誰であるかとい・・・ 宮本百合子 「結集」
・・・自分の才能がまだ自分でさえ確り掴めないうちに、非人情的大都会の孤独な日常生活が魂の底を脅かし始めるという状態をはる子ははっきり理解出来た。千鶴子はその時、失敗して帰国した兄の知人の家で家事の手伝いをしていた。そこの老夫婦と面白くないこともあ・・・ 宮本百合子 「沈丁花」
・・・ 今日の情勢は、ブルジョア作家の各人の日常の生活現実にも影響して、その経済的基礎を脅かし、思想の自由を抑圧している。プロレタリアートの組織は極度に破壊されているし、よしんばそれがどこかにあったとしても小市民的インテリゲンチアの日常の救い・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・一方に、労働調整法が出来かかったりしているが、金融資本を守るためからの失業は誰にとっても脅かしの影となっていて、勤労大衆はまったく主権在民を実現して合理的に生産関係を独占から解放しなければ、生きてゆけないところまで来ているのである。そのきょ・・・ 宮本百合子 「郵便切手」
・・・強権を発動して供出をさせると脅かしたり、輸入米が出来ると気休めをいったりするけれども、つまるところは、米の価格吊上げという、一層人民生活を破壊する方法しか実現していない。人民の生活を破壊した政府は、どれだけの実力を以て、今日その再建をすると・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫