・・・僅か五隻のペリー艦隊の前に為す術を知らなかったわれらが、日本海の海戦でトラファルガー以来の勝利を得たのに心を躍らすのである。 下 先生はこの驚嘆の念より出立して、好奇心に移り、それからまた研究心に落ち付いて、この・・・ 夏目漱石 「マードック先生の『日本歴史』」
つめたいいじの悪い雲が、地べたにすれすれに垂れましたので、野はらは雪のあかりだか、日のあかりだか判らないようになりました。 烏の義勇艦隊は、その雲に圧しつけられて、しかたなくちょっとの間、亜鉛の板をひろげたような雪の田・・・ 宮沢賢治 「烏の北斗七星」
・・・ベズィメンスキーなどとバルチック艦隊文学研究会員、赤軍機関誌編輯者、赤軍劇場管理者などが集り、赤色陸海軍文学協会中央評議会を結成した。一九三〇年初秋のことである。 ロカフ中央評議会の決議は左のようなものであった。一、ロカフは芸術活動・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・二・二六事件の秘史というものが、当時の内部関係者であったファシスト軍人によって主観的に合理化してかかれたものが公表されるし、日本海軍潰滅前後の物語も、当時の連合艦隊参謀長というような人々によって執筆されはじめた。 これらの記録には、どれ・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・遠くの海に艦隊がきた。鼻眼鏡をつけ顎に髯のあるチェホフが、独身暮しの医者が、双眼鏡をとって海上の艦隊を眺める。 町では小歌劇、蚤の見世物。クニッペルがひらひらのついた流行型のパラソルをさしてそれを女優らしく笑いながら観ている。チェホフは・・・ 宮本百合子 「シナーニ書店のベンチ」
・・・プロレタリア文学戦線の、赤軍・赤艦隊への拡大だ。 セラフィモウィッチ、スルコフなどが主となって研究委員会が「赤軍中央会館」で行われた。一九三〇年初秋のことだ。 ソヴェトが、帝国主義に包囲されているという国際的地位からみて、当然、もっ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト文壇の現状」
・・・智謀にも長け、情に篤く、大胆な決断力をも蔵していたであろうが、例えばバルチック艦隊全滅の勝利にしろ戦争は独り角力でない以上、対手かたの条件との相対的な関係というものが大きい作用をしている。 あの時分のロシアは、ヨーロッパの眠れる熊と呼ば・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・祖国ギリシャの敗戦のとき、シラクサの城壁に迫るローマの大艦隊を、錨で釣り上げ投げつける起重機や、敵船体を焼きつける鏡の発明に夢中になったアルキメデスの姿を梶はその青年栖方の姿に似せて空想した。「それにはまた、物凄い青年が出てきたものだな・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫