・・・いるとおり、十六歳の学問好きな、そして母から伝えられた根気よさと自立を愛する精神をもつ少女ジュヌヴィエヴが、第一次のヨーロッパ大戦前のフランスの中流生活の常套の中で、俗っぽく偽善的な父親が強いている「良俗」に反抗し、自分の独立と自由とを主張・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
・・・ジイドの描いたジュネヴィエヴという十八歳の娘は、平俗偽善な小市民的父親の「良俗」に反抗し、抗議せずにいられない情熱から、自分の独立を、自分の不服従を、女性だけがなし得る出産という行為で、明らかにする欲求から結婚もせず、恋愛からでもなく、子供・・・ 宮本百合子 「未開の花」
・・・の委員であった諸氏の内には、もとより混り気のない心持で、日本の美風良俗をいかがわしい自然主義の傾向から守ろうと思って参加していた人達もあったであろう。しかし今日歴史の大局から当時を顧みれば「文芸委員会」の客観的本質は、偽善なく現実社会の曝露・・・ 宮本百合子 「矛盾の一形態としての諸文化組織」
出典:青空文庫