・・・その夜は茶飯ぐらいこしらえて酒の一升も買うときまってる。 今日は珍しくおはま満蔵と兄と四人手揃いで働いたから、家じゅう愉快に働いた。この晩兄はいつもより酒を過ごしてる。「省作、今夜はお前も一杯やれい。おらこれでもお前に同情してるど、・・・ 伊藤左千夫 「春の潮」
・・・方が厭な顔をしてこの多忙しい中を何で遅く来ると小言を言ったから、実はこれこれだって木戸の一件を話すと、そんな事は手前の勝手だって言やアがる、糞忌々しいからそれからグングン仕事に掛って二時過ぎになるとお茶飯が出たが、俺は見向も仕ないんだ。お女・・・ 国木田独歩 「竹の木戸」
・・・この映画の中に現われている限りの出来事と達引とはおそらくパリという都ができて以来今日に至るまでほとんど毎日のようにどこかの裏町どこかの路地で行なわれている尋常茶飯のバナールな出来事に過ぎないであろう。それほどに平凡な月並み、日並み、夜並みの・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
出典:青空文庫