・・・常磐木があるので黒と白の配色。荘重 山と峡谷 ○信州の女○眼比較的大 二重瞼で、きっとしたような力あり。野性的の感○蚕種寒心太製造 隣室の話 男、中年以上姉さんという女 もっと若い女・・・ 宮本百合子 「一九二七年春より」
・・・ バルザックは、ユーゴオのようにギリシャ悲劇の教養を土台にして、その作品に美と獣性、淫蕩と清純な愛、我慾と献身という風な二元的な対位法を使い、ロマンティックな荘重さ、熱烈さ、高揚で、文体を整えることも出来なかった。バルザックはこれらの輝・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・その恰幅と潮風に鍛えられた喉にふさわしい低い幅のある荘重な音声で草稿にしたがって読まれる演説は、森として場内の隅々まで響いた。どことなしお国の訛が入る。 つづいて桜内蔵相。内容はともかくとしてやはり声はよく耳に入った。畑陸相が登壇すると・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
・・・少くも荘重を闕いでいると認めている。しかし古言がやがて雅言で、今言がやがて俚言だとは私は感じない。私はこの頃物を書くのに、平俗は忌避せぬが、卑俚には甘んぜない。それは人の平俗だとしている今言で荘重な意味も言いあらわされると思って、今言を尊重・・・ 森鴎外 「訳本ファウストについて」
・・・相重なった屋根の線はゆったりと緩く流れて、大地の力と蒼空の憧憬との間に、軽快奔放にしてしかも荘重高雅な力の諧調を示している。丹と白との清らかな対照は重々しい屋根の色の下で、その「力の諧調」にからみつく。その間にはなお斗拱や勾欄の細やかな力の・・・ 和辻哲郎 「偶像崇拝の心理」
・・・そうしてこの成長、突破が年ごとに迫り行くところは、ただ偉大な古典的作品にのみ見られる無限の深さ、底知れぬ神秘感、崇高な気品、清朗な自由、荘重な落ちつきである。自分は正直に白状するが去年美術院の展覧会で初めてルノアルの原画を見たときにも、岸田・・・ 和辻哲郎 「『劉生画集及芸術観』について」
出典:青空文庫