・・・ 燃料がどこの家でも不如意になって来ていて、風呂たきは注意ぶかい一家の行事の一つとなった。 いろいろのものが焚かれるようになって来た。物置はそのために隅々までしらべられ、もう十七年も前、駒沢の家から外国旅行に出るとき、遑しい引越し荷・・・ 宮本百合子 「折たく柴」
・・・ 菊人形が国技館で開かれるようになってからは、見にゆく人の層も変ったらしいけれども、団子坂の菊人形と云われたことは、上野へ文展を見にゆく種類の人にも、そう縁の遠くない秋の行事の一つだったのではなかろうか。千駄木町に住んでいた漱石の作品の・・・ 宮本百合子 「菊人形」
・・・ これまで婦人デーというと、社会主義の思想をもつ一部の婦人たちの間で行われる行事であるかのように考えられて来ました。そして、またそのように考えさせるために、昨年なども、いろいろの宣伝が行われました。三月八日に婦人デーをするなどということ・・・ 宮本百合子 「国際婦人デーへのメッセージ」
・・・ あの記事によって私共は日常行事を知り得た。衣類や食物や、行動の時間割などについて。紙数の制限があった故であろうが、余りそれだけすぎた。例えばそのような細部に於ても女囚が月経中まし紙と称して多少余計な浅草紙をいただかせて頂く、ということ・・・ 宮本百合子 「是は現実的な感想」
・・・例えば中国の習俗では正月を迎えることは年中行事中、最も賑やからしい様子ですが、それなら中国の村人、市民がこれまでの歴史のなかで常に安穏な月日を経て来ているかと云えば、事実は反対のものとして語られていると思います。日本の私たちは、あながちその・・・ 宮本百合子 「歳々是好年」
・・・何をしているところかと思ってみれば、それは、結婚記念に指紋をとる、という世界にもめずらしい行事をおこなっているところなのだった。『サン』のカメラは、ぬけめなく国内国外の目新しい写真をあさっているわけだが、この福島県のある村の人たちが、結婚式・・・ 宮本百合子 「指紋」
・・・それは全く感動に堪えない一つの行事であった。今でも本を買う特別な親愛の心はやはり微かな亢奮をふくんでいて独特な味いである。 今十六七歳の少女は、どんな心持で本というものを見て感じているのだろうか。この間もある大きな新刊書を売る店で、その・・・ 宮本百合子 「祖父の書斎」
〔大正三年予定行事〕 一月、「蘆笛」、「千世子」完成〔一月行事予記〕「蘆笛」、「千世子」完成 To a sky-Lark 訳、「猟人日記」、「希臘神話」熟読「錦木」一月一日晴 寒〔摘要〕四方拝出席・・・ 宮本百合子 「日記」
・・・これらの見解の中心点は、恋愛にしろ結婚にしろロマンティックな花飾で飾られたこれらの人間行事は、窮極のところ人間の生物的な種の保存という自然の目的に従ったものであるに過ぎないというところにある。女性は、あらゆる時代を通じてこの「生の力」の盲目・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・ 第一、今度の総選挙は、日本の民主化のための重大な国民の行事であった。そのために、四月十日は休日になった。それほど大切な投票であるのに、全国で十四万人余の選挙人名簿記載洩れが生じた。新聞は、婦人参政権のために、殆ど一生を費して来た市川房・・・ 宮本百合子 「春遠し」
出典:青空文庫